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若年でのパニック発作の既往は心疾患リスクを高める
Panic Attacks May Increase Cardiac Risk

2008/12/24

 50歳までにパニック発作パニック障害を経験した人では、心筋梗塞のリスクは38%上昇し、冠動脈疾患のリスクは44%上昇することが明らかとなった。これは、University College LondonのKate Walters氏らが、European Heart Journal誌オンライン版に報告したもの。

 これまでの大規模コホート研究では、50歳以上のパニック傾向を持つ患者において、冠動脈疾患リスクに中等度の上昇が見られている(ハザード比[HR]:1.11、95%信頼区間[95%CI]:1.03-1.20)。しかし、これらの患者における心疾患死亡は、全年齢において、対照群よりもわずかに低いことも示されていた(HR:0.76、95%CI:0.66-0.88)。

 パニック発作の症状(突然の動悸や胸痛)は急性心疾患とよく似ているため、当初は心疾患がパニックと誤診されたり、交感神経系の活性化、動脈硬化の進行、心拍数の変動性の減少などを介した因果関係があるとされてきた。パニックと心疾患のリスク上昇は、時間が経過してもその関連性が維持されているため、両者の関連性を疑う研究者もいる。

 だがいずれにしても、「パニック症状のある患者を診断・治療する場合、臨床医はこの可能性について用心深く対処することが肝心である」と筆者は指摘した。

 今回Walters氏らが発表した研究は、British General Practice Researchデータベースに参加する650カ所の一般診療施設において、1990~2002年にパニック障害またはパニック発作と診断された16歳以上の5万7615例を解析したもの。パニック障害または発作の罹患率は全体の1.1%だった。発症者1例について、同じデータベースから年齢および性別をマッチさせた、パニック障害および発作のない6例の患者を抽出して比較した。

 年齢、性別、社会経済的要因、心疾患の既知の危険因子、精神疾患の併存について調整後、パニック障害または発作の診断と心筋梗塞リスクの関係を解析した結果、若年患者では38%と有意なリスク上昇と関連していたが(HR:1.38、95%CI:1.06-1.79)、50歳以上の症例では関連は見出されなかった(HR:0.92、95%CI:0.82-1.03)。
 
 試験登録時に16~39歳だった若い女性では特にリスクが高く、冠動脈疾患の発生は対照群と比較して3.034倍だった (95%CI:1.59-7.02)。

 50歳未満の患者では、パニック発作の回数が多くなればなるほど、心筋梗塞のリスクが高くなる傾向が見られた(イベント数が少なく、信頼区間も大きかったという制限はある)。そして、50歳未満でパニック発作の経験がある患者は、心虚血、狭心症、急性冠症候群、心筋梗塞、および冠動脈血行再建など、より広い冠動脈疾患のリスクも高くなっていた。

 なお、パニック障害および発作と冠動脈疾患リスクの関連性は、50歳未満(44%リスク上昇)においても50歳以上(11%リスク上昇)においても有意だった(50歳未満についてHR:1.44、95%CI:1.25-1.65、50歳以上についてHR:1.11、95%CI:1.03-1.20)。

 また、40歳未満の女性でよりリスクが高く、冠動脈疾患のリスクはパニック障害や発作がない人と比較して3.03倍であり(95%CI:2.15-4.27)、長期にわたりパニック発作の回数が増えるほど、リスクも上昇する傾向にあった。

 このように年齢によって差が生じる理由の1つとして、高齢患者では、最初のパニックの診療を受けた際に、臨床医は心疾患の可能性を否定するため慎重に診断する結果、誤診率が低くなることが考えられるという。

 もう1つは、「パニック障害による交感神経系の活性化でアテローム性動脈硬化がわずかながら進行するとしても、高齢者においてはより大きな原因となる加齢性の動脈硬化の進行によって覆い隠されるため、高齢者群ではパニックに起因する相対リスクが有意ではなくなるのではないか」とWalters氏のグループは見ている。

 今回の結果では、パニック障害や発作に関連した冠動脈疾患による死亡は有意に低いことも示している(HR:0.76、95%CI:0.66-0.88)。これは、パニックに関連したリスクが最も高かった若年群は、心疾患による死亡が少ないことが考えられるほか、パニック障害や発作と診断された人は、受診により心疾患が致命的になる前から医師が積極的に治療するようになるというアドバンテージが生まれる可能性も否定できない。

 筆者らは、測定されていない交絡因子や診断バイアス、すなわち「一般医の中には冠動脈疾患とパニック障害の両者とも過少報告する傾向がある」という可能性があることに注意すべきとも指摘した。

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