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サイアザイドは低K血症を誘発し糖尿病のリスクを高める
Thiazide-Induced Hypokalemia May Mediate Increased Diabetes Risk

2008/12/10

 サイアザイド系利尿薬により誘発される血清カリウム値低下が、同薬物の投与による糖尿病発症リスクの上昇と関連する可能性が示された。クロルタリドンを用いたプラセボを対照とする降圧治療試験では、血清カリウム値の0.5 mEq/Lの低下に伴い糖尿病のリスクが45%上昇していた(p<0.001)。

 米Johns Hopkins大のTariq Shafi氏らがSHEP(Systolic Hypertension in the Elderly Program)試験のデータを解析した結果で、Hypertension誌オンライン版に報告された。

 試験の最初の1年間において、クロルタリドン投与群で血清カリウムの変化をコントロールした結果、糖尿病リスク上昇は40.7%低下した。研究者らは、これは有意な結果であるとし、「医師がカリウム値をモニターしている限り、サイアザイド系利尿薬は安全に投与できることを示している」と語った。バナナやオレンジなどのカリウムが豊富な食品の摂取を増やし塩分の摂取を減らすといった簡単な方法でカリウム値低下を抑制できるという。
 
 ただし、カリウム補充が糖尿病リスクに及ぼす影響をランダム化試験で評価する必要があると、研究者は合わせて指摘した。

 これまでの研究で、サイアザイド系利尿薬は糖尿病のリスク上昇および血清カリウム値の低下のそれぞれに関連していることが示唆されてきたが、Shafi氏は、「今回初めて、我々はその二つの点を結びつける具体的な情報を得た」と語った。

 Shafi氏の研究グループは、クロルタリドン(1日12.5 mgで開始)またはプラセボを投与された60歳以上(平均70歳)の患者を対象とするSHEP試験の参加者3790例のデータを解析した。この試験での糖尿病の定義は、患者の自己申告を基にしており、糖尿病治療薬の使用、空腹時血糖値が126mg/dL以上、または随時血糖値が200mg/dL以上とした。

 中央値4.4年の追跡期間中、459例に糖尿病が発症したが、うち41.6%が最初の1年間に発症していた。試験1年目では、クロルタリドン投与群の糖尿病発症率はプラセボ群の約2倍になっていた(ハザード比[HR]:2.07、95%信頼区間[95%CI]:1.51-2.83)。プラセボ群の糖尿病発症リスクは上昇していなかった。

 一方、クロルタリドン投与群の血清カリウム値は、最初の1年間でベースライン時から0.4 mEq/L有意に(p<0.001)低下したのに対し、プラセボ群では変化はなかった。

 血清カリウム値で調整したところ、1年目のクロルタリドン投与群の糖尿病リスクの上昇は小さくなったことから(HR:1.54、95%CI:1.09-2.17)、サイアザイド系利尿薬の仲介作用が示唆された。追跡2年目以降は、プラセボ群と比較したクロルタリドン群の糖尿病リスク上昇はみられなかった(HR:1.08、95%CI:0.84-1.39)。

 Shafi氏は、サイアザイド系利尿薬を処方する前に、まず血清カリウム値を測定すべきと指摘する。「通常、血清カリウム値が心臓に問題を起こすほど低下していないことを確認するために、投与開始から6週間後の数値のみを注目しがちだ。そのため、投与前と比較して有意に低下していることに気づかず、結果として患者を糖尿病発症のリスクにさらしているかもしれない」。
 
 著者らはこの試験の限界として、制御できない交絡因子が残存している可能性があること、カリウムサプリメントの服用に関する情報が限られていること、カリウムと関係する他の要因が糖尿病の発症に関与している可能性があることなどの制約があることを認めている。

 この発表に関する論説で、米インディアナ大のRajiv Agarwal氏は、血清カリウムの低下は糖尿病発症の単なるマーカーなのか、何らかの機序が関与するかは不明であると指摘した。

 Agarwal氏は、低カリウム血症の治療によりサイアザイド系利尿薬を服用している患者の糖尿病発症を予防できるかを調べるランダム化臨床試験が必要であるという点について、著者らに同意している。「このような試験の結果が報告されるまでは、高血圧患者の治療を行う医師へのメッセージとは、低カリウム血症を避けること、特にサイアザイド系薬やサイアザイド類似利尿薬を使用する場合は厳重に注意することである」と指摘した。

 Agarwal氏は、低カリウム血症を防ぎ、血圧を低下させることができると思われるDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食のような、カリウム豊富な食事の推奨を提案している。

 さらに、サイアザイドによる低カリウム血症に至った患者の管理には、降圧薬をカリウム保持性利尿薬、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、またはジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬に切り替えることも有効だとAgrwal氏は語った。

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