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悪い上司の下では部下の心血管疾患リスクが上昇
Bad Boss May Foster Bad Hearts

2008/12/09

 心筋梗塞など虚血性心疾患のリスクは、上司から大きなストレスを受ける職場環境で上昇する可能性があることが、プロスペクティブなコホート研究から示された。ストックホルム大のAnna Nyberg氏らがOccupational and Environmental Medicine誌オンライン版で報告した。

 この結果は、3200例以上の会社員を対象としたWork, Lipids, and Fibrinogen(WOLF)Stockholm研究で得られたもの。リーダーシップスキルに乏しい上司の下で働いていると、たとえその期間が1年であっても、男性会社員の心筋梗塞、不安定狭心症、心臓死、虚血性心疾患死のリスクが24%上昇した(年齢調整後のリスク)。さらに、男性会社員が上司からストレスを多く受ける状態に4年間置かれた場合、虚血性心疾患イベントのリスクは39%も上昇した。

 これまでに、従業員に緊張を与えるような劣悪な労働環境は、健康、特に心血管系に影響を及ぼすという、観察的エビデンスが集積されているが、今回発表された知見もこの見解を支持するものである。

 一方、著者らは、良い上司は職場における否定的でストレスの多い環境の影響を弱めると推測しており、「これらの社会心理学的な労働環境の改善により、従業員の虚血性心疾患を減らすことができる」と指摘した。

 WOLF研究の対象は、ストックホルム周辺の会社に勤務し、虚血性心疾患に罹患していない19~70歳の男性3239例。参加者には、ベースライン時に臨床検査と彼らの上司に関する質問票の記入を行い、その後は国立病院への入院および死亡記録を通して追跡した。

 全体として、上司のリーダーシップの偏差値が上がるごとに、入院を要する急性心筋梗塞または不安定狭心症、虚血性心疾患または心停止による死亡の複合リスクは低下した (ハザード比:0.80、95%信頼区間:0.64-0.99)。

 年齢調整後の解析において、上司を良いリーダーと評価していた従業員ほど、虚血性心疾患のリスクは低下し、ほとんどの場合、この関連は現在の職場で働いた期間の長さにより強化されていた。

 リーダーシップスキルの1標準偏差上昇によるハザード比は、

・1年で0.7(95%CI:0.61-0.96)
・2年で0.77(95%CI:0.61-0.97)
・3年で0.69(95%CI:0.54-0.88)
・4年で0.61(95%CI:0.47-0.80)

 不安定狭心症を除いて解析すると関連性は強くなった。一方、社会経済的要因や従来の虚血性心疾患の危険因子を調節しても関連性に変化はなかった。

 上司のリーダーシップの質が高いこと、つまり個々の従業員対する配慮、目標および期待される役割を明確に示すこと、情報およびフィードバックを提供すること、環境の変化にうまく対応する能力、従業員の参加や自主性を促進することなどが、有意に虚血性心疾患の減少と関連していた。

 リーダーシップの質として関連性が見られなかった数少ない例外は、上司が従業員に何を期待しているのかを明確に理解すること、従業員がスケジュールの立案に参加すること、および従業員が何か悪いことをしたときの上司からの批判があることであった。

 Nybergらはこの研究の限界として、対象が高等教育を受けたスウェーデン人男性の集団であるため、他の文化や女性に一般化することには制約があるとした。また、1つの企業で働いた期間は、必ずしも同じ管理者や監督者のもとで働いた期間を意味するわけではない。

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