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AHA2008
PPIとクロピドグレル、相互作用はあるのか?
AHA: Conflicting Data Arise from Studies of PPI-Clopidogrel Interaction

2008/12/03

 プロトンポンプ阻害薬PPI)とクロピドグレルの併用にはリスクがあるか──。

 米国心臓学会学術集会(AHA2008)で発表された2つの研究結果は相反するもので、問題の解決には至らなかった。2つのうち1つは、大規模な統合データベースを使用したレトロスペクティブ解析で、PPIを併用するとクロピドグレル使用者の50%で主要心血管イベント(MACE)のリスクが上昇するという結果だった。もう1つは、大規模臨床試験「CREDO」のサブグループ解析の結果で、クロピドグレルの使用とは無関係に、PPIが投与されていると心血管イベントのリスクが上昇するというものだった。

 CREDOのサブ解析の結果を発表した米ケンタッキー大のSteven P. Dunn氏は、「この知見が示す臨床的意義については、さらに検討が必要である」と語った。

 これらの研究の背景には、クロピドグレルがCYP3A4およびCYP2C19を経て活性代謝物になるプロドラッグである一方で、PPIがCYP2C19活性を強力に阻害するという問題がある。

 今年はじめに報告された試験では、経皮的冠動脈インターベンションPCI)を受けたPPI使用者でクロピドグレルの抗血小板活性が有意に低下、この相互作用に根拠を与えるものとなった(J Am Coll Cardiol 2008;51:256-260)。

●データベース解析ではPPI服用の有無で心血管イベントに有意差
 Medco Health Solutions社のRonald Aubert氏が発表した大規模なデータベースを対象とした解析は、PCIを受け、その後12カ月間クロピドグレルを継続した1万6718例の転帰を追跡したものだ。対象者のうち9900例はクロピドグレル投与期間中いずれの時点でもPPIは投与されておらず、6800例ではPPIと併用投与されていた。

 解析の主要エンドポイントは、12カ月間に発生したMACE、すなわち脳血管イベント、急性冠症候群、心血管死、および冠動脈血行再建で、副次エンドポイントは、主要エンドポイントの各項目である。

 12カ月間のMACE発生率は、PPI使用者が約25%であったのに対し、クロピドグレル投与中PPIを投与しなかった患者は17~18%で、その差をMACEのハザード比で1.50と算出された(p<0.0001)。

 主要エンドポイントの各項目を解析すると、血行再建(p<0.0001)、急性冠症候群(p<0.0001)、および脳血管イベント(p=0.002)で有意差が示された。

 またサブグループ解析では、MACEのリスクは年齢、性別、心血管イベント歴、糖尿病、高血圧、慢性腎疾患、脂質異常症の病歴とは無関係に一貫して上昇することが示された。

 Aubert氏は本解析において、他の心血管危険因子に関する情報がないこと、およびメディケア受給者に関するデータの完全性など保健請求データに関する限界があることを認めているが、「PPI併用によりMACEのリスクが有意に50%上昇した。この上昇は、主に心筋梗塞、PCIおよび不安定狭心症の再発ための入院が原因だった。この影響は全ての患者背景および心血管リスク群の間で一貫している」と結論づけた。

●CREDO試験の解析では抗血小板療法に関係なく有意差あり
 一方、Dunn氏は、PCIを受けた患者を対象としてクロピドグレルとアスピリンの併用投与とアスピリン単独投与とを比較したCREDO試験のサブ解析から得た知見を報告した。

 CREDO試験の対象者は、PCIの3~24時間前にランダム化された上で、クロピドグレル+アスピリンないしはアスピリン単独のいずれかの投与を受けた。その後、クロピドグレ+アスピリンを28日間投与され、その後再びランダム化されクロピドグレル+アスピリンとアスピリン単独のいずれかの投薬が28日~12カ月間行われた。

 この試験で得られた主な知見は、追跡期間全体を通じてクロピドグレル+アスピリンを投与された患者の心筋梗塞、脳卒中または死亡の相対リスクが27%減少したことであった。

 CREDO試験ではPPI使用の有無を登録時に確認しており、今回のサブ解析の主要エンドポイントは、PPIの使用が28日後および12カ月後の臨床転帰に及ぼす影響であった。研究者は登録時にPPIを服用していた374例と、服用していなかった1742例を比較検討した。

 未調整データの解析結果では、主要エンドポイントの頻度は登録時にPPIを投与されていた患者の方が高かった。

 28日間のイベント発生率は、PPIを服用していたプラセボ(アスピリン単独群)およびクロピドグレル(アスピリンとの併用群)投与患者がそれぞれ約10%であった。PPIを服用していなかった患者のイベント発生率は、プラセボ群が7.4%、クロピドグレル群が5.4%で、試験の母集団全体の解析から、PPI服用者と非服用者の間でイベント発生率に統計的有意差があることが示された(10%対6.4%、p=0.015)。

 1年間のイベント発生率も同様に、PPI服用者ではプラセボ群とクロピドグレル群の間に有意差はなかった(16.2%対13.2%)。登録時にPPIを使用していなかった場合、イベント発生率はプラセボ群が10.8%、クロピドグレル群が7.7%であった。

 しかし、この場合も全体の試験集団の解析により、PPI服用者の間で抗血小板療法とは無関係に、50%以上高いイベント発生率が示された(14.8%対9.2%、p=0.001)。

 クロピドグレル投与患者の多変量解析により、PPIを併用した場合の28日間のハザード比は1.8(95%CI:0.99-3.23、p=0.051)、1年後のハザード比は1.6(95%CI:1.02-2.63、p=0.043)であった。

 プラセボ投与患者に限定した多変量解析により、PPI使用者において28日間のハザード比は1.4と有意ではなかったが、1年後では1.6で、統計的に有意な値となっていた(p=0.035)。

 ランダム化した治療とベースライン時のPPI使用の間における交互作用の検定結果には有意差はなく(p=0.69)、ベースライン時のPPI使用に関連したハザードの意味は、治療割り付けとは無関係に依然として一貫していた。

 「クロピドグレルは、登録時のPPI使用とは無関係に、1年後の主要エンドポイントにおいて有益であると思われる」と、Dunn氏は結論づけた。

 2つの試験を受けて、AHA、米心臓学会(ACC)、および米消化器病学会は、PPIとクロピドグレルを服用している患者に、担当医に相談することなく服用を変更しないよう指導する共同声明を発表した。「この相互作用は、多数の患者で試験されたことはないため、PPIの使用によりクロピドグレルの心イベント予防作用が阻害されることを示す決定的証拠ではない。今回示された試験は、いずれも医療方針を変更するだけの十分な証拠とはならない」と共同声明で述べている。

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