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AHA2008
心不全死亡の予測能でBNPに勝る新規バイオマーカー
AHA: Biomarker Beats BNP for Heart Failure Mortality Prediction

2008/11/28

 心不全患者の90日後の予後予測能について、標準的検査であるB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)およびN末端-proBNP(NT-proBNP)よりも、内皮細胞の機能不全のマーカーであるmid-Regional pro-Adrenomedullin(MR-proADM)の方が優れていたという研究結果がまとまった。

 米国心臓協会(AHA)・学術集会のlate-breaking clinical trials sessionで、ドイツCharite-UniversitatsmedizinのStefan D. Anker氏らが発表した。BNP、NT-proBNPの予測精度がそれぞれ60%、63.6%だったのに対し、MR-proADMの予測精度は73.5%と、前二者に比べ有意に高かったという(共にp<0.001)。

 これに対して、本報告のディスカッサントとなった米テキサス大Southwestern Medical CenterのMilton Packer氏は、新たなバイオマーカーのニーズはほとんどないとコメントした。通常、平均的な患者は救急治療部門で使用できる100を超えるバイオマーカーのうちの約40種類の検査を既に受けており、臨床的判定に必要なレベルを超えているとPacker氏は語る。

 さらに同氏は、BNPもその前駆体も予後予測能については知見が不足しており、検査の予後予測能を改善しても診断能が向上しない限り、診療にはほとんど影響しないだろうとも語った。

 これに対してAnker氏は、医療資源が限られている状況を考慮すると、MR-proADMによって「治療を最優先に変更させる」べき患者のトリアージに役立てることはできるとしたが、Packer氏は、心不全例では「全ての患者が優先順位の上方にいる」と反論した。

 「心不全症例の検査により、死亡リスクが10%の患者と20%の患者を区別することができたとしても、それで治療方針が変わることはない。いずれにしても、患者には最適な治療を施すべきであり、ある患者には行うが他の患者には行わないような高価な治療はない」とPecker氏は付け加えた。

 しかしAnker氏は、「現実的には全ての救急治療部門の医師が心臓病専門医ではなく、医師はサポートを必要としており、より良いバイオマーカーは必要である」と主張した。

 アドレノメデュリンAdrenomedullin)は微小循環不全や内皮細胞機能不全において重要な血管拡張ホルモンだが、比較的不安定で半減期が短いために、日常の診断には適さない。ただしその前駆体は測定がより簡単であるため、Anker氏らはMR-proADMと標準的バイオマーカーをプロスペクティブに比較するBiomarker in Assessment of Congestive Heart Failure試験を実施した。

 本試験の対象者として、15施設の救急医療部門に息切れを訴えて来院した患者のうち、透析を受けておらず、非外傷性の症状で、明白な心筋梗塞例を除く1641例が登録された。主要エンドポイントは90日後の生存で、急性心不全患者568例と非心不全患者1073例の全員を追跡した。

 その結果、心不全を有する患者の90日までの全死亡の予測能は、MR-proADMが73.5%、BNPが60.8%、NT-proBNPが63.6%で、MR-proADMと他のバイオマーカーとの間には有意差が見られた(p<0.001)。また、BNPないしNT-proBNPとMR-proADMの併用によって予測能がさらに改善されるかも検討したが、どちらもMR-proADMの予測能に上乗せする効果はなかった。

 一方、心不全の診断とは無関係に息切れを訴えた患者全体を対象にすると、MR-proADMは90日死亡を高い精度で予測したほか(p<0.0001)、BNPおよびNT-proBNPの予測能に有意な上乗せ効果も示された(共にp<0.0001)。このバイオマーカーは、急性心不全ではない患者と30日死亡の予測について、特に予測能が高かった(交互作用についてp=0.005)。

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