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軽度の睡眠時無呼吸でも心血管リスクは上昇
Even Mild Sleep Apnea May Increase Cardiovascular Risk

2008/11/13

 日中に眠気を感じない程度の閉塞性睡眠時無呼吸の患者でも血管機能は低下しており、同時に心血管系のリスクは上昇していることが明らかとなった。

 軽微な症状しか見られない患者でも、健常対照者と比較して有意に上腕動脈血流依存性血管拡張反応が失われており(p=0.003)、動脈硬化が進行していた(p=0.04)。この結果は、Oxford Center for Respiratory MedicineのMalcolm Kohler氏らがAmerican Journal of Respiratory and Critical Care Medicine誌11月1日号に報告した。

 「この知見により、これまで考えられていたよりも多くの人にリスクがあることを示すものだ。その中には閉塞性睡眠時無呼吸であることに全く気づいていない人も含まれるだろう」とKohler氏は指摘した。

 中等度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸は、血管機能の低下および高血圧と関連しているが、中年世代の最高4分の1に発生するといわれる軽度の睡眠時無呼吸が、同じ悪影響をもたらすかどうかは知られていない。

 そこでOxford Sleep Unitでは、閉塞性睡眠時無呼吸が観察されるが日中に眠気を感じていない患者64例(平均年齢57.9歳。以下、患者群)と、健常対照者15例(平均年齢58.1歳。以下、対照群)の血管機能を比較した。

 酸素飽和度低下指数は、患者群では全員7.5/時以上(平均23.1)であったのに対し、対照群は5/時未満であった。

 患者群では、酸素飽和度低下指数スコアが有意に高く(p<0.0001)、頚部周囲径が大きかった(p=0.01)。患者群は、対照群に比べ上腕動脈の血流依存性血管拡張反応も有意に低かった(平均5%対7.5%、p=0.003)。「この差の大きさは、血流依存性血管拡張反応とその後の心血管イベントの関連性を明らかにしようとする試験の臨床的意義の大きさを示す」と研究者は語る。さらに、患者群ではAI(augmentation index)で評価した動脈硬化の程度が有意に進行していた(26%対21%、p=0.04)。

 また、患者群では、前腕虚血後(-2%対-6%、p=0.005)およびアルブテロール投与後(-3%対-7%、P=0.04)のAIの変化が有意に小さかった。このことは、血流依存性血管拡張反応で得られる結果とは異なった血管径の内皮機能障害を反映したものであるという。

 これらの知見は自由行動下血圧(ABPM)の上昇とは関連していなかったものの(p=0.21)、「軽微な症状を呈する閉塞性睡眠時無呼吸患者では、心血管リスクの増大が示唆されている」と研究者は指摘している。

 閉塞性睡眠時無呼吸患者の心血管リスクが上昇する機序として、酸化的ストレス、無呼吸状態時に繰り返し起こる血圧の急上昇によって生じる過大な動脈せん断応力、内皮細胞のアポトーシスの増加、凝固因子やコレステロール値の上昇などによる内皮の一酸化窒素合成酵素のダウンレギュレーションが考えられる。

 現状では推測の域を超えないが、これらの患者における動脈硬化の進行は、頻繁な睡眠の中断や間欠的低酸素症による交感神経の活発化、もしくは一酸化窒素のバイオアベイラビリティ低下に伴う内皮機能障害により生じていると研究者は考えている。ただし、これらの知見は患者群と対照群の間にみられる、わずかな脂肪の付き方の違いが交絡因子となっている可能性があるとも認めている。「頚部周囲径は閉塞性睡眠時無呼吸患者の方が大きいが、ウエスト・ヒップ周囲径はそうではない。一部の状況においては、頚部周囲径は上半身肥満の良い尺度で、心血管リスクと強く相関していると示されているため、脂肪の付き方のわずかな違いが交絡因子である可能性を示唆している」という。しかし、いずれの関連においても、因果関係は確立されていないことも認めている。

 ブラジル、サンパウロ大Heart InstituteのGeraldo Lorenzi-Filho氏およびLuciano Drager氏は、同誌の論説において、参加者の睡眠の質および長さに関する情報がないことをStudy Limitationとして指摘した。

 さらに、患者に眠気の症状がなかったという事実にもかかわらず、平均酸素飽和度低下指数スコアが高値であったことから、少なくとも一部の患者は中等度以上の睡眠時無呼吸患者であった可能性があるという。

 しかしながら、「本試験が示す潜在的な意義を、過小評価するべきではない」とも言う。閉塞性睡眠時無呼吸の定義を厳しく適用したとしても、有病率は男性が9%、女性が4%に上ると推測できる。「どのような視点から見ても、閉塞性睡眠時無呼吸は重篤な心血管疾患につながる主要な健康上の負荷である」と結論した。

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