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研修医の心臓手術、成績はStaff Surgeonと遜色なし
Residents' Performance in Cardiac Surgery on Par with That of Staff Surgeons

2008/10/21

 心臓手術を行った術者が正職員の外科医(staff surgeon)ではなく研修医であっても、患者の長期転帰はほぼ同等であることが単施設試験によって示された。

 カナダDalhousie大Maritime心臓センターのRoger Baskett氏らは、冠動脈バイパス術CABG)、大動脈弁置換術またはその両方の実施後、平均2.7年追跡し、心血管疾患による死亡や再入院の頻度を、術者が研修医かstaff surgeonかで比較した。その結果、治療結果に差はみられなかった(HR:1.05、95%CI:0.94-1.17、p=0.42)。

 入院期間中の転帰も同様で、研修医の方がより困難な症例を担当していたにもかかわらず、術者が研修医かstaff surgeonかによる差はほとんどなかった。結果の詳細は、Circulation誌Cardiovascular Surgery Supplement(9月16日発行)に掲載された。

 「重要なメッセージは、適切に監督していれば、研修医に実習として手術を行わせても危険はないということである」と、Baskett氏は述べている。「研修医が執刀することは非常に重要だ。なぜなら、彼らが次世代の手術を行う医師となるからだ」。

 これまでにも、研修医に心血管手術を行わせることで、術直後の結果が悪くなることはないと報告されている。しかし、これら従来の報告では長期予後に関する情報が欠けていた。

 著者らは「研修医の手術では、細心の注意を払って監督をすると、ほとんどの場合で短期的には良好な臨床結果を得られる。しかし、どのように厳重に監督をしてもCABGで不完全な縫合が1~2カ所でもあると、長期にわたるグラフトの開存性が低下しかねない。ひいてはこれが好ましからざる臨床結果につながる恐れがある」と研究のきっかけを語る。

 この長期的な問題を検証するために、筆者らはMaritime心臓センターにおいて1998年から2005年の期間に、研修3年目以上の7人の研修医と7人のstaff surgeonにより実施された心臓手術のデータをレトロスペクティブに解析した。研修医が実施したのはCABGと大動脈弁置換術(または両方の組み合わせ)1054件で、staff surgeonが実施したのは5877件であった。

 研修医が手術した症例には、左心室機能不全うっ血性心不全、術前の心房細動、術前の大動脈内バルーンパンピング(IABP)、過去の心臓手術歴、貧血の既往などの割合が有意に高かった(全項目についてp<0.05)。さらに、研修医の執刀例の方が、緊急性が高い症例が多く含まれていた(16.5%対12.2%、p=0.01)。

 「研修医自らが経験したい治療現場を選ぶ場合、より困難な症例を選ぶ傾向があるので、このような傾向が出ることは予想されていた。研修期間中に難症例に対する処置の訓練を受け、困難な意思決定を行う経験を持つことは有益だ」と、研究者らは語る。

 入院中の死亡は、研修医が行った手術の方がわずかに高い傾向にあったが、その差は統計的有意水準には達していなかった(3.98%対2.91%、p=0.06)。多変量解析の結果からも、研修医が術者であることと入院中の死亡とに相関性は無いことが示された(OR:1.09、95% CI:0.75-1.58、p=0.66)。

 さらに、入院中の死亡、脳卒中、出血、IABP、腎不全および深部胸骨感染などの複合エンドポイントの発生と、術者のレベルに有意な関連はなかった。(OR:1.01、95% CI:0.82-1.26、P=0.90)。

 患者の大半(96.9%)は生存して退院した。中央値2.7年の追跡期間中、2522例の死亡または心血管イベントによる再入院があった(36.9%)。無イベント生存率は、研修医が手術した患者とstaff surgeonが手術した患者の間で大差はなく、術後1年 では81.3%対79.1%、3年で68.2%対66.7%、および5年で58.6%対55.8%だった(p=0.06)。

 著者らは本研究がレトロスペクティブ試験であるため、いくつかの限界があることを認めている。具体的には、結果は他の施設にあてはめることができない、残差交絡の可能性や研修医による選択バイアスの可能性がある、評価基準が血管造影による開存性評価などの技術的成功の尺度ではなく臨床転帰を用いている点などである。

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