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第46回
心不全+心房細動にランジオロールをどう使う

2014/03/10

 心房細動に関する話題として新規抗凝固薬が良く取り上げられていますが、「少し飽きてきたな」という方々のために、今回は「心不全+心房細動」の話をしましょう。社会の高齢化に伴い、心不全も心房細動もそれぞれ増加することが知られているので、両者の合併は高齢化社会で対処しなければならない重要な課題です。

 しかし、この「心不全+心房細動」、討論するのに難しい点が2つありそうです。第一に、いずれの病態もそれぞれが症候群のようなものなので、この両者のコンビネーションは多種多様となってしまい、人によって想定する病態が異なってしまう可能性があることです。第二に、急性管理と慢性管理でその視点が全く異なることです。心不全だけでも両者の視点は当然異なるのですが、心房細動も急性と慢性ではその持つ意義が異なるため、より複雑化してしまうのです。

 このような限界(あまりに大き過ぎる限界ですが・・・)を前提にした上で、今回は「心不全+心房細動」の急性管理を取り上げたいと思います。それというのも、ランジオロール(商品名オノアクト)が2013年秋より「心機能低下例における頻脈性不整脈(心房細動・粗動)」への使用が承認され、その使用法が今後課題になると予想されるからです。

 既に、このランジオロールをこの病態に使用してみた方はいるでしょうか。もし使用されていたら、なかなか難しいなと感じなかったでしょうか。私自身は、このランジオロール承認のベースとなったJ-Land Study(Circ J. 2013;77:908-16.)に関わっているため、その意味からも少しでも皆さんの参考になればと、この心房細動塾で取り上げることにしました。ただし、あくまでも私自身の個人的な見解です。

 さて、ランジオロールのトピックに入る前に、この「心不全+心房細動」の急性管理に関するこれまでの情報を整理しておきましょう。といってもそれほど確固とした情報がないところがミソかもしれません。

1.「心不全+心房細動」の急性管理で目標とする心拍数は?

 心不全を呈する患者での頻脈性心房細動・・・その頻脈は心不全を悪くしているだろうと多くの人が考え、感じるはずです。病室ではモニター心電図のアラームが鳴り、看護師から「どうするんですか? このままでいいんですか?」とにじり寄られれば、なんとかその頻脈を抑えたいと思うはずです。

 しかし、驚くことに、いったん心拍数を抑制しようとした時、その心拍数目標値がそもそも存在しない(これまでに知られていない)ということを知っていたでしょうか。目標値もないのに、雰囲気だけで下げていれば、そのうち痛い目に会います。心不全患者では、1回拍出量の低下を心拍数の上昇でカバーしている患者が必ず存在するからです。

著者プロフィール

山下武志(心臓血管研究所所長・付属病院院長)やました たけし氏。1986年東大卒。同大第二内科に入局。阪大第二薬理学、東大循環器内科助手などを経て、2000年から心臓血管研究所第三研究部長、2011年から現職。不整脈診療の第一人者であるとともに、分かりやすい著書や講演でも名をはせる。

連載の紹介

山下武志の心房細動塾
不整脈の診療に造詣の深い山下武志氏が、自身の経験と最近充実してきたエビデンスを踏まえ、心房細動診療の最新の考え方と実践例を紹介する。同氏が提唱する「3ステップ」や「洞調律への復帰をあせるべからず」「患者満足度の重視」という視点は、心房細動を診るすべての臨床医が傾聴すべき真実を含んでいる。

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