ダビガトランとの因果関係を否定できない死亡例がこれまでに5例報告されたことから、厚生労働省の指示を受けメーカーからダビガトラン使用に関するブルーレターが発行されました。死亡症例は高齢者で、腎機能障害例が目立ちます。
ダビガトランはその80%を腎排泄に依存する薬物であり、クレアチニンクリアランス(Ccr)が30mL/分を下回る患者には投与できないこと、Ccrが30~50mL/分でも慎重な投与を要すること、特に高齢者はクレアチニン値から感じられる以上にCcrは低下していることなどを、処方する医師は改めて認識する必要があります。
これまで抗凝固療法についてはワルファリン単独の時代が長く続いたため、「抗凝固療法イコール腎機能に注意」という連想が働きにくくなっているので、なおさらのことです。私自身は、Ccrより低めの値が出る推算糸球体濾過量(eGFR)を、Ccrの基準と同様にとらえて使用しています(つまり結果的により厳しい基準を用いていることになります)。新しい時代には新しいルールが生じる、そのように感じています。
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著者プロフィール
山下武志(心臓血管研究所所長・付属病院院長)やました たけし氏。1986年東大卒。同大第二内科に入局。阪大第二薬理学、東大循環器内科助手などを経て、2000年から心臓血管研究所第三研究部長、2011年から現職。不整脈診療の第一人者であるとともに、分かりやすい著書や講演でも名をはせる。

連載の紹介
山下武志の心房細動塾
不整脈の診療に造詣の深い山下武志氏が、自身の経験と最近充実してきたエビデンスを踏まえ、心房細動診療の最新の考え方と実践例を紹介する。同氏が提唱する「3ステップ」や「洞調律への復帰をあせるべからず」「患者満足度の重視」という視点は、心房細動を診るすべての臨床医が傾聴すべき真実を含んでいる。
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