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第33回
心筋梗塞とワルファリン、そして新規抗血栓薬

2010/12/20

 今年最後の心房細動塾の話題は、「ワルファリン心筋梗塞」です。「心房細動」とは関係なさそうなテーマをなぜ取り上げたかについては、最後までお読みくださればご理解いただけると思います。

 では、始めましょう! 心筋梗塞の予防にアスピリンが有効であることはあまりにも周知の事実です。現在は薬剤溶出ステントが普及したため、複数の抗血小板薬を処方されている患者も数多くいることでしょう。

 抗血小板薬の著しい普及は私たちの感性に影響を与えます。さらに、動脈血栓に対しては抗血小板薬、静脈血栓に対しては抗凝固薬というくくり方も非常に理解しやすいですね。

 その結果として、抗凝固薬は心筋梗塞予防に多少有効かもしれないけれども、抗血小板薬であるアスピリンには及ばないと考えてしまいがちです。実際のところ、私自身がいつのまにかそのように考えていました。そこで、今回はこの問題を見直してみたいと思います。

 実は1990年代に、心筋梗塞の予防は、抗血小板薬か抗凝固薬かという討論がなされていたようです(私自身はあまり記憶にないのですが・・・)。そしてこのような討論の結果、2000年以降ようやく抗血小板薬に落ち着いたのでしょう。それでは、このような結論に至らせた臨床報告を改めて見てみたいと思います。

(1)心筋梗塞の1次予防(Lancet. 1998;351:233-41.

 この臨床試験は、心筋梗塞の1次予防として、アスピリン、低用量ワルファリン、あるいはその併用が有効かどうかを検討したものです。完全な無作為化とはいえないようですが、5499例がプラセボ、アスピリン、低用量ワルファリン(平均PT-INR:1.47)、アスピリン+低用量ワルファリン併用に割り付けられ、1次エンドポイントを虚血性心疾患イベントとして経過観察されました。

著者プロフィール

山下武志(心臓血管研究所所長・付属病院院長)やました たけし氏。1986年東大卒。同大第二内科に入局。阪大第二薬理学、東大循環器内科助手などを経て、2000年から心臓血管研究所第三研究部長、2011年から現職。不整脈診療の第一人者であるとともに、分かりやすい著書や講演でも名をはせる。

連載の紹介

山下武志の心房細動塾
不整脈の診療に造詣の深い山下武志氏が、自身の経験と最近充実してきたエビデンスを踏まえ、心房細動診療の最新の考え方と実践例を紹介する。同氏が提唱する「3ステップ」や「洞調律への復帰をあせるべからず」「患者満足度の重視」という視点は、心房細動を診るすべての臨床医が傾聴すべき真実を含んでいる。

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