日経メディカルのロゴ画像

第32回 米国心臓協会(AHA2010)より
新しい抗血栓療法の時代がやってきた!

2010/11/22

 心房細動患者の脳梗塞予防についてはこの心房細動塾でもたびたび取り上げてきました。これまでワルファリンという単一の薬剤で対処するしかなかったのですが、ついに「明治維新」とも例えられる新しい時代がやってきたようです。

 昨年の欧州心臓学会ESC)ではダビガトランを用いたRE-LY試験の成績がセンセーショナルに報告され、今年11月13日から米国シカゴで開かれた米国心臓協会AHA)学術集会ではその第2弾ともいうべき、リバロキサバンを用いたROCKET-AF試験の結果が報告されました。いずれもワルファリンとの非劣性を証明しようとした試験で、両方ともにその企画意図は成功したと言えます。

 新しい薬剤とワルファリンの大きな相違点は何でしょう。ワルファリンが間接的に幅広く凝固因子の生成を抑制するという特性を持つのに対して、新規抗血栓薬は直接的に単一の凝固因子を抑制するという特性があります。ワルファリンは複雑な薬物、新規抗血栓薬は単純な薬物といえるのではないでしょうか。この単純さ故、採血によるモニタリングが不要となり、食事や併用薬に対する注意も格段に減少するわけです。

 このことを知ると次に、ダビガトランとリバロキサバンのどちらが優れているのだろうという興味がわくかもしれません。しかし、これに対する回答は今のところ、神のみぞ知るです。学術的には抗トロンビン薬(ダビガトラン)と抗Xa薬(リバロキサバン)の違いということになるのでしょうが、両薬剤の直接対決試験が行われない限り、誰も分かりません。

 RE-LY試験とROCKET-AF試験の成績は一見同じようですが、試験方法や患者対象はかなり異なっています。


著者プロフィール

山下武志(心臓血管研究所所長・付属病院院長)やました たけし氏。1986年東大卒。同大第二内科に入局。阪大第二薬理学、東大循環器内科助手などを経て、2000年から心臓血管研究所第三研究部長、2011年から現職。不整脈診療の第一人者であるとともに、分かりやすい著書や講演でも名をはせる。

連載の紹介

山下武志の心房細動塾
不整脈の診療に造詣の深い山下武志氏が、自身の経験と最近充実してきたエビデンスを踏まえ、心房細動診療の最新の考え方と実践例を紹介する。同氏が提唱する「3ステップ」や「洞調律への復帰をあせるべからず」「患者満足度の重視」という視点は、心房細動を診るすべての臨床医が傾聴すべき真実を含んでいる。

この記事を読んでいる人におすすめ