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第31回 欧州心臓学会(ESC2010)より 2
ANTIPAFで出た「心房細動とARB」の最終結論

2010/09/06

 「心房細動アップストリーム治療」──これは最近10年間に用いられるようになった用語です。非常に聞き心地のよい言葉ということもあり、循環器医の間ではかなり浸透してきた感があります。

 この夢をかなえる治療法の筆頭候補が、アンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)でした。あくまでも仮説として提起された治療法にすぎないのですが、既に確立したものとして認識されている方もいるかもしれません。

 ようやくここ1年の間に、その仮説を検証した前向き大規模臨床試験の結果が続々と報告されました。GISSI-AF試験、ACTIVE-I試験、本邦で行われたJ-RHYTHM II試験、そして今回の欧州心臓学会ESC2010)で結果が発表されたANTIPAF試験です。

 これら4つの試験以外に、心房細動におけるARBの有用性を検討する大規模臨床試験は現在行われていません。つまり、私たちはこの治療法について今これらの研究を総括し、一定の最終結論を導き出しておく必要があります。

 このうちACTIVE-I試験、J-RHYTHM II試験の結果の概要については既に第21回第26回に述べていますので、今回はGISSI-AF試験とANTIPAF試験の概略を見てみます。

GISSI-AF試験
 この試験で検証された仮説は、「ARBの追加投与により、心房細動の再発が抑制されるか否か」です。それまでの臨床研究のサブ解析では、あらゆるタイプの心房細動にARBが有効である可能性を示していたことから、本研究の対象は発作性心房細動あるいは持続性心房細動除細動後などすべてを包括し、洞調律であることを確認した上で試験参入としています。

 1442例の患者が登録され、ARB(バルサルタン)群(722例)とプラセボ群(720例)に無作為に割り付けられ、二重盲検の下で治療を1年間受け、試験参入後心房細動再発までの時間を1次エンドポイントとして追跡されました。

 平均365日の観察期間中に、1次エンドポイントの心房細動初回再発を認めたのはARB群51.4%、プラセボ群52.1%(P=0.83)、「複数回心房細動発作を認めた患者」はARB群26.9%、プラセボ群27.9%(P=0.34)と、いずれも2群間に有意差は認められなかったというものです。この主要結果は、ACE阻害薬投与の影響を受けませんでした。

著者プロフィール

山下武志(心臓血管研究所所長・付属病院院長)やました たけし氏。1986年東大卒。同大第二内科に入局。阪大第二薬理学、東大循環器内科助手などを経て、2000年から心臓血管研究所第三研究部長、2011年から現職。不整脈診療の第一人者であるとともに、分かりやすい著書や講演でも名をはせる。

連載の紹介

山下武志の心房細動塾
不整脈の診療に造詣の深い山下武志氏が、自身の経験と最近充実してきたエビデンスを踏まえ、心房細動診療の最新の考え方と実践例を紹介する。同氏が提唱する「3ステップ」や「洞調律への復帰をあせるべからず」「患者満足度の重視」という視点は、心房細動を診るすべての臨床医が傾聴すべき真実を含んでいる。

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