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第28回
心房細動に関連したスコアはいろいろあるが

2010/05/19

 心房細動患者の治療が難渋してしまう原因の1つに、心房細動患者の多様性があることはもう周知の事実でしょう。心房細動の治療法が1つで済まない理由もここにあります。心房細動による脳梗塞を予防しようとしても、すべての患者にワルファリンを投与するわけにはいかないのは、その象徴です。

 ですから、自分も2000年代前半までは、AFFIRM試験のプロトコールを参考にワルファリン投与を行っていました。しかしあまりに煩雑で、とても同じことを人に勧めることができませんでした。

 そして、この問題を解決すべく登場したのが、皆さんもよくご存じのCHADS2スコアです(第6回参照)。心不全(Congestive heart failure)、高血圧(Hypertension)、年齢(Age)、糖尿病(Diabetes mellitus)、脳梗塞(Stroke/TIA)の頭文字をとって命名されたスコアで、前4項目には1点、脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)の既往には2点を与えて合計点を算出します。とても覚えやすいスコアなので多くの医師に受け入れられ、ワルファリン療法の適切な普及に大きく貢献したといえるでしょう。

 このスコアが明確に教えてくれたことは、次の2点だと思います。(1)多様性を持つ心房細動患者に対しては「リスク層別化」という戦略で対処する必要がある、(2)このリスク層別化は「単純」である必要がある──。これは、一般の戦略や戦術でよくいわれていることに似ています。

 そうはいっても、心房細動患者の重要なアウトカムは脳梗塞に限りません。大出血、心不全、心房細動の進行など、重要度はそれぞれ異なるものの将来起こるべき事態はたくさんあります。そのようなアウトカムに対するリスク層別化も必要ではないかと何となく感じていたら、続々と報告され始めました。出典はいずれも同一のヨーロッパのコホート研究ですが、ここで紹介してみましょう。

 まずは、HATCHスコア。これは発作性心房細動に適用するスコアで、点数が高ければ高いほど、慢性化しやすいそうです。下に年間慢性化率を示してみます。

著者プロフィール

山下武志(心臓血管研究所所長・付属病院院長)やました たけし氏。1986年東大卒。同大第二内科に入局。阪大第二薬理学、東大循環器内科助手などを経て、2000年から心臓血管研究所第三研究部長、2011年から現職。不整脈診療の第一人者であるとともに、分かりやすい著書や講演でも名をはせる。

連載の紹介

山下武志の心房細動塾
不整脈の診療に造詣の深い山下武志氏が、自身の経験と最近充実してきたエビデンスを踏まえ、心房細動診療の最新の考え方と実践例を紹介する。同氏が提唱する「3ステップ」や「洞調律への復帰をあせるべからず」「患者満足度の重視」という視点は、心房細動を診るすべての臨床医が傾聴すべき真実を含んでいる。

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