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第27回
レートコントロールの目標心拍数とCAST試験

2010/04/12

 GISS-AF、ACTIVE-I、J-RHYTHM IIといった試験の結果が「心房細動アップストリーム治療」という概念を揺るがしている間にも、心房細動に関するエビデンスは続々と発信されています。

 今年3月のACC(米国心臓学会)で報告されたRACE II 試験も、「心房細動の心拍数調節」という古典的な課題に対して一定の回答を引き出し(N Engl J Med誌オンライン版に即日掲載)、現在のガイドラインの記載内容に変更を迫るものでした。

 慢性心房細動の心拍数をどの程度にコントロールすべきか──。これは長い間、分かっているようで分からないテーマでした。ガイドラインには、安静時60~80/分を目指すという文章が掲載されてきましたが、専門家の経験的な指針にすぎません。実際に古くから心拍数がその程度のlone Af(孤立性心房細動)は予後がよいという経験がありましたから、それほど疑問に思われていなかったのでしょう。

 RACE II試験はその心拍数の目標値を検討テーマにしたのです。永続性心房細動患者を対象に、従来のガイドラインを厳格に遵守する群(安静時80/分以下、軽度労作時110/分以下)と、緩めのコントロールを行う群(安静時110/分以下、これ以外の基準なし)の2群に無作為に振り分け、心血管死と塞栓症、大出血、心不全入院、デバイス(ペースメーカ、ICD)植え込みの複合エンドポイントを1次評価項目として最大3年間経過観察しています。

 緩めのコントロール群では、安静時心拍数110/分以下でよいとされたのですから、極めて甘い、あるいは甘すぎるといってもよい基準だと思います。当然、この群では投薬の微調節やホルター心電図などの検査も不要になるため(外来時の心電図だけでよい)、試験期間中の受診回数はガイドライン遵守群に比べて少なかったそうです。

 そして、その後患者のアウトカムはどうなったでしょうか? 1次エンドポイントの発生曲線を次ページに示します。

著者プロフィール

山下武志(心臓血管研究所所長・付属病院院長)やました たけし氏。1986年東大卒。同大第二内科に入局。阪大第二薬理学、東大循環器内科助手などを経て、2000年から心臓血管研究所第三研究部長、2011年から現職。不整脈診療の第一人者であるとともに、分かりやすい著書や講演でも名をはせる。

連載の紹介

山下武志の心房細動塾
不整脈の診療に造詣の深い山下武志氏が、自身の経験と最近充実してきたエビデンスを踏まえ、心房細動診療の最新の考え方と実践例を紹介する。同氏が提唱する「3ステップ」や「洞調律への復帰をあせるべからず」「患者満足度の重視」という視点は、心房細動を診るすべての臨床医が傾聴すべき真実を含んでいる。

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