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第26回
J-RHYTHM II 試験から見えてきたこと

2010/03/18

 日本心電学会が主催して2006年から開始されたJ-RHYTHM II 試験の結果が、先日の第74回日本循環器学会総会・学術集会LBCTセッションで発表されました。この結果はまだ発表されたばかりであり、その解釈には十分な時間が必要だと思います。また正式な論文として発表された際にはさらなる吟味が加わっている可能性もありますが、ここでは、現時点での一個人としての印象を語ってみたいと思います。

 本試験は高血圧を有する発作性心房細動患者を対象として、1次エンドポイント(1カ月当たりの発作性心房細動発症の日数)、2次エンドポイント(心房細動の慢性化、左房径、QOL)を設定しています。アップストリーム治療効果を有すると考えられてきたレニン・アンジオテンシン系RAS)阻害を行う群(アンジオテンシンII受容体拮抗薬ARBカンデサルタン投与群)と行わない群(カルシウム拮抗薬CCBアムロジピン投与群)に無作為に患者を振り分け、電話転送心電計を用いながら最大1年間追跡しました。その結果、両エンドポイントとも両群間に有意な差は認められませんでした。

「アップストリーム治療」という用語の危うさ

 今後も、心房細動患者において過剰に活性化した神経体液性因子(もしそれがあるならば)を制御すること自体は、間違っていないと思います。しかし、その神経体液性因子が常にRASであるという根拠は乏しいことは、誰もが認めるでしょう。また、心房細動という表現型は様々な病態が進行した末の結果を見ている可能性があります。結果が出てしまってから、「後出しじゃんけん」のように原因と想定される神経体液性因子に手を出したとしても、too lateである可能性も否定できません。

 「アップストリーム治療」という用語は聞こえのよい言葉であるが故、そのような当たり前のことを忘れさせてしまいます。その言葉のイメージは膨らませすぎた風船のようにどんどん拡大し、いつか破裂するでしょう。個人的には、この用語を曖昧な定義のまま使用することは慎むべきであると思っています。少なくとも現時点で、RAS阻害薬の効果については、GISSI-AF、ACTIVE-I、J-RHYTHM IIという3つの前向き無作為化比較試験がいずれも統計学的に有意な差を見いだすことができなかったのですから…。

 

著者プロフィール

山下武志(心臓血管研究所所長・付属病院院長)やました たけし氏。1986年東大卒。同大第二内科に入局。阪大第二薬理学、東大循環器内科助手などを経て、2000年から心臓血管研究所第三研究部長、2011年から現職。不整脈診療の第一人者であるとともに、分かりやすい著書や講演でも名をはせる。

連載の紹介

山下武志の心房細動塾
不整脈の診療に造詣の深い山下武志氏が、自身の経験と最近充実してきたエビデンスを踏まえ、心房細動診療の最新の考え方と実践例を紹介する。同氏が提唱する「3ステップ」や「洞調律への復帰をあせるべからず」「患者満足度の重視」という視点は、心房細動を診るすべての臨床医が傾聴すべき真実を含んでいる。

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