日経メディカルのロゴ画像

第25回
抗不整脈薬ベプリジルについて考える

2010/01/25

 先生方は心房細動に対してベプリジル(商品名ベプリコール)という薬物を使用したことがありますか? 今回は、この特殊な薬物について最近何が分かってきたかを示しながら、抗不整脈薬に依存することの問題点を説明したいと思います。

 心房細動に対してベプリジルが用いられているのは、世界の中で本邦のみです。海外では重篤な心室性不整脈を誘発するリスクが高いため、心房細動に対して用いられていません。

 一方、本邦ではかつて、ベプリジルは「他の抗不整脈薬が使用できないか、または無効の場合の頻脈性不整脈(心室性)、狭心症」を適応症とする薬剤でしたが、投与量を減量することで心房細動に対しても使用可能とする一部施設からの経験的報告に基づき、徐々に適応外使用がなされるようになったという経緯があります。

 しかし、これらの報告には多くのバイアスがあるため、前向きに多施設でその効果を検討する必要がありました。2008年から2009年にかけて研究成果が報告されていますが、これらの結果を知って以降、私自身は(両試験ともに関与しましたが)ベプリジルの新規処方を1例も行っていません。

 その1つが、持続性心房細動に対するベプリジルの心房細動停止効果を、3カ月の観察期間の二重盲検ランダム化試験で検討した、J-BAF研究(Circ J. 2009;73:1020-7.)です。ベプリジル100mg/日で約35%、200mg/日で約70%の心房細動停止効果を示したのですが、以下の2つの新しい事実も浮かび上がりました。

・心房細動停止後の再発率が極めて高い

・200mg/日投与群29例中1例に、約1カ月後、心室頻拍による突然死を生じた(本薬の添付文書の警告欄に心室頻拍から死亡に至った症例がみられたとあるのは、この1例)


著者プロフィール

山下武志(心臓血管研究所所長・付属病院院長)やました たけし氏。1986年東大卒。同大第二内科に入局。阪大第二薬理学、東大循環器内科助手などを経て、2000年から心臓血管研究所第三研究部長、2011年から現職。不整脈診療の第一人者であるとともに、分かりやすい著書や講演でも名をはせる。

連載の紹介

山下武志の心房細動塾
不整脈の診療に造詣の深い山下武志氏が、自身の経験と最近充実してきたエビデンスを踏まえ、心房細動診療の最新の考え方と実践例を紹介する。同氏が提唱する「3ステップ」や「洞調律への復帰をあせるべからず」「患者満足度の重視」という視点は、心房細動を診るすべての臨床医が傾聴すべき真実を含んでいる。

この記事を読んでいる人におすすめ