抗不整脈薬の投与により洞調律が維持され、患者さんの満足度向上が得られても、薬の効果がいつまでも持続するとは限りません。心房細動は進行性の疾患であり、抗不整脈薬による洞調律化の効果は長期的にみると一時的であり、薬の種類を変えたり複数の薬を併用しても、次第に薬剤抵抗性となり心房細動の頻度が増加してしまうことが多いのです。
わが心臓血管研究所では、初診時に発作性心房細動と診断された患者(171例)を長期に観察した結果を報告しています1)。それによれば、抗不整脈薬の投与や電気的除細動の施行にもかかわらず、約14年で77%(年率5.5%)の患者で心房細動が慢性化してしまいました(図1)。言い換えれば、平均約10年の経過で約半数の患者は抗不整脈薬が効かなくなってしまうのです。その有効期間は、左心房が大きいほど、高齢であるほど短くなる傾向にありました。
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著者プロフィール
山下武志(心臓血管研究所所長・付属病院院長)やました たけし氏。1986年東大卒。同大第二内科に入局。阪大第二薬理学、東大循環器内科助手などを経て、2000年から心臓血管研究所第三研究部長、2011年から現職。不整脈診療の第一人者であるとともに、分かりやすい著書や講演でも名をはせる。

連載の紹介
山下武志の心房細動塾
不整脈の診療に造詣の深い山下武志氏が、自身の経験と最近充実してきたエビデンスを踏まえ、心房細動診療の最新の考え方と実践例を紹介する。同氏が提唱する「3ステップ」や「洞調律への復帰をあせるべからず」「患者満足度の重視」という視点は、心房細動を診るすべての臨床医が傾聴すべき真実を含んでいる。
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