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第10回
抜歯時はワルファリンを中断すべきか?

2008/09/22

 高齢者へのワルファリン導入に際してもう一つ大切なことは、ビタミンK含有食品の禁止や相互作用のある薬物への注意、抜歯時の休薬の可否など、ワルファリンを安全に服用するための情報提供です。

 製薬企業などが提供するワルファリン手帳には、そのための注意事項がこまごまと記載されており、正直いって医師でさえもうんざりしてしまうほどのボリュームです。患者さんが嫌になってワルファリンを服用しなくなったら元も子もありません。不安がらせずにきちんと服用してもらうための説明を心掛けること、これは難しいことなのですが同時に極めて重要なことです。既に皆さんはそれぞれに工夫をされているかと思いますが、ご参考までに私が日ごろ実践していることを述べましょう。

 ワルファリンの作用を減弱させるビタミンKの摂取に関しては、納豆やクロレラなどビタミンKを大量に含む補助食品以外は自由に摂ってかまわないと指導しています。患者さんにとって一生続ける治療ですから、食事制限は最小限にとどめたいと考えています。緑黄色野菜や海草類にもビタミンK含有量が多いものがありますが、一度に大量に摂取しない限り問題はなく、むしろそれらの摂取は健康維持に欠かせないものですから、心配せずに食べるよう話しています。しかし、地域によっては新鮮な野菜が食材として重宝されている可能性があり、その場合は異なった説明が必要かもしれません。

 ワルファリンとの相互作用を起こす薬物に関しては、ご存じのようにワルファリン手帳にたくさん記載されています。基本的に、薬物相互作用のチェックは医師や薬剤師の役目であり、他の医療機関を受診する際はワルファリンを服用していることを伝えるよう指導することが重要です。特に高齢者の場合、整形外科にかかり非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs)を処方されていることが多いので要注意です。実際、私の外来の患者さんで、驚くほどINRが上がったので理由を探ったところ、NSAIDsを1週間以上併用していました。

 ただ、手帳に記載されている薬物が必ず相互作用を起こすとは限りません。私はそのような薬物を併用しなければならない場合、投与3~4日後と1週間後にINRを測定しますが、これまでの経験ではワルファリンの調節が必要になることは滅多にありません。心配するほどの相互作用は起こらないということかもしれません。

著者プロフィール

山下武志(心臓血管研究所所長・付属病院院長)やました たけし氏。1986年東大卒。同大第二内科に入局。阪大第二薬理学、東大循環器内科助手などを経て、2000年から心臓血管研究所第三研究部長、2011年から現職。不整脈診療の第一人者であるとともに、分かりやすい著書や講演でも名をはせる。

連載の紹介

山下武志の心房細動塾
不整脈の診療に造詣の深い山下武志氏が、自身の経験と最近充実してきたエビデンスを踏まえ、心房細動診療の最新の考え方と実践例を紹介する。同氏が提唱する「3ステップ」や「洞調律への復帰をあせるべからず」「患者満足度の重視」という視点は、心房細動を診るすべての臨床医が傾聴すべき真実を含んでいる。

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