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第7回
アスピリンでは心原性脳梗塞を防げない

2008/08/14

 発作性・慢性にかかわらず心房細動が認められ、CHADS2スコアが1点以上であれば、ワルファリンによる抗凝固療法を行うのが原則だと言いました。もちろん、ワルファリンが非常に厄介な薬剤であることは百も承知しています。出血性合併症のリスク、INR(international normalized ratio)のモニタリングと投与量の調節、他の薬剤や食品との相互作用、コンプライアンスなど注意しなければいけないことがたくさんあります。医師の心理として、できればアスピリンで済ませたいという気持ちになるのはよくわかります。

 実際、当院での前向き調査(Shinken Database 2004)を見ても、CHADS2スコアが1~2点以上の症例では約50%にワルファリンによる抗凝固療法がなされているものの、残りの半数はアスピリンによる抗血小板療法が行われていました。確かに海外では、アスピリン(325mg/日)が心房細動患者の脳血管イベントの抑制に有効であるとの大規模臨床試験(SPAF-I試験1)、SPAF-II 試験2))の結果や、アスピリンが脳卒中の発症率を22%低下させるとのメタアナリシス3)などがあります。

 前回述べたように、これらのエビデンスから、2006年に改訂された欧米のガイドラインではCHADS2スコアが1点の場合、「アスピリン(81~325mg)か、ワルファリン(INR2.0~3.0、目標値2.5)」の投与が推奨されています4)。日本循環器学会のガイドラインでも、欧米のエビデンスを基に、危険因子のない60~75歳の非弁膜症性心房細動患者に対して、アスピリン(75~325mg/日)、チクロピジン(200mg/日)もしくはワルファリン(INR1.6~2.6)の投与が勧められています。

著者プロフィール

山下武志(心臓血管研究所所長・付属病院院長)やました たけし氏。1986年東大卒。同大第二内科に入局。阪大第二薬理学、東大循環器内科助手などを経て、2000年から心臓血管研究所第三研究部長、2011年から現職。不整脈診療の第一人者であるとともに、分かりやすい著書や講演でも名をはせる。

連載の紹介

山下武志の心房細動塾
不整脈の診療に造詣の深い山下武志氏が、自身の経験と最近充実してきたエビデンスを踏まえ、心房細動診療の最新の考え方と実践例を紹介する。同氏が提唱する「3ステップ」や「洞調律への復帰をあせるべからず」「患者満足度の重視」という視点は、心房細動を診るすべての臨床医が傾聴すべき真実を含んでいる。

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