今回から6回のシリーズで、ライティングからプレゼンテーション、そしてディスカッションのそれぞれについて、ワンランク上の英語発表を目指すための基本を解説していきたいと思います。初回は、「テクニカルライティング(科学的情報の伝え方)の特徴」を取り上げます。
科学技術英語においてライティングの出発点は、テクニカルライティングに徹するということです。
テクニカルライティングとは、普通のことをそのとおりに正確に明確に伝達する言葉で表現することです。そのために必要不可欠なことが、批評的考え方(クリティカルシンキング)です。自分が得た情報を分析し、一定の基準で分類する。その上で論理的に考え、問題点を解決していく。こうした一連の思考的活動のことをクリティカルシンキングと呼びますが、その成果を表現する方法がテクニカルライティングとなるわけです。
文学的エッセイとテクニカルライティングの違いをみると分かりやすいと思います。
(A) The heart is the seat of feeling, understanding, and thought.
(B) The heart is a hollow muscular organ that keeps up the circulation of the blood.
例文の(A)は、文学的な表現で「心は感情、思考、理解の宿るところである」となります。一方の(B)は、テクニカルな表現で「心臓は血液の循環を保つ空隙筋肉器官である」と表現しています。
文学的エッセイは、ごく普通のことのなかから、面白いこと、美しいこと、恐ろしいことなどを強調して表現します。しかし、テクニカルライティングでは、より客観的に書くことを目的としているのです。