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China Watch 3
中国開発の薬剤溶出ステントの実力はいかに

ファイアーフォークステント(MicroPort社ウェブサイトより)

 カナダ司法省は2018年12月1日、中国・華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟(モン・ワンチョウ)副会長兼最高財務責任者(CFO)を逮捕した。サイバー覇権をめぐる米中衝突の激化が背景にあると言われる。米国をなりふり構わぬ対決姿勢にさせるほど、中国のハイテク製造業の隆盛は著しい。そんな中、中国発の薬剤溶出ステント(DES)「ファイアーフォーク(Firehawk)」が、世界標準とされるザイエンス(Xience)に対し、標的病変不全およびステント内晩期血管径損失において非劣性であることが示された(TARGET All Comers試験)[1]。本研究は米国エール大学のAndreas Baumbach氏らの主導により、欧州10カ国21施設で行われた前向き多施設共同非盲検無作為化非劣性試験である(Shanghai Microport Medicalの資金援助による)。

 ファイアーフォークのプラットフォームはコバルトクロム合金製の薄型ストラットで、生分解性のポリマーから低用量のシロリムスが溶出される。血管壁に接する側のステント表面に溝を作りそこにポリマーを搭載することで、血管内腔側の薬剤濃度を低くでき、最適な抗再狭窄効果と抗炎症反応が得られるという。ステント血栓症のリスク低減を意図した設計と考えられる。

 ステント血栓症の原因として、(1)ステントが血管内面に密着していない状態による血液の乱流、(2)ステントの表面が血管内皮細胞でカバーされていない状態による血小板の活性化、(3)カバーされていても徐放用担体であるポリマーによる慢性的な炎症反応などにより、内皮機能が不全状態にあること――などが考えられている[2]。

 そこでメーカー各社は、(1)曲がった血管にも圧着しやすい柔軟なステントプラットフォームの開発、(2)血管内皮細胞が再生する血管内腔側には薬剤をコーティングしないアブルミナル(abluminal)コーティングや血管内皮前駆細胞を捕捉する抗体のコーティング、(3)ポリマーによる慢性的な炎症をなくすために生分解性ポリマーの採用――といった対策を打ち出している。

 既に本邦で使用されているテルモのアルチマスター(Ultimaster)は、従来のステンレススチールよりも強度が高いコバルトクロム合金を使用して、圧着性の高い薄型プラットフォームを特徴とする。さらに、血管内皮細胞が再生する内腔側にシロリムスをコーティングしないアブルミナルコーティングを採用し、生分解性ポリマーからシロリムスを徐放する。標的病変不全に関して、ザイエンスに対する非劣性も実証されている(CENTURY II 試験)[3]。ファイアーフォークは、先行するアルチマスターに非常によく似ている。

 TARGET All Comersの対象は、症候性または無症候性の冠動脈疾患1653例(2400病変)で、経皮的冠動脈インターベンション治療(PCI)の適応と判定された客観的な心筋虚血のエビデンスを有する患者。被験者は、ファイアーフォークまたはザイエンスを留置する群に無作為に割り付けられた。アウトカム評価者には割付群に関する情報がマスクされたが、担当医および患者にはマスクされなかった。

 平均年齢はファイアーフォーク群が64.9歳、ザイエンス群は65.3歳、男性がそれぞれ78.1%、76.4%。12カ月後の標的病変不全の累積発生率(図1)は、ファイアーフォーク群の6.1%(46/758例)に対してザイエンス群は5.9%(45/764例)。差分は0.2%(90%信頼区間[90%CI]:-1.9~2.2、非劣性のP=0.004)で非劣性マージン3.5%を下回ったため、ファイアーフォーク群のザイエンス群に対する非劣性が示された。ただし、優越性までは認められなかった(95%CI:-2.2~2.6、優越性のP=0.88)。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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