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原著第20版が今年8月に出版
『ハリソン内科学』のハリソン先生に迫る

(写真提供:南江堂

 今年8月、かの『ハリソン内科学』の原著第20版(Harrison's Principles of Internal Medicine, Twentieth Edition)が出版された(右写真)。原著出版元であるMcGraw-Hill Educationの宣伝文句は“Landmark Twentieth Edition of the Global Icon of Internal Medicine”とある。内科学の世界的象徴なのだ。

 大学卒業後に内科に進まなかった先生方も学部生時代、『ハリソン』の名は一度ならず耳にしたであろう。筆者も一応買って、持ってはいる。当座の診療に関係するページを繰って、図表を追いかけたことがある。だが、とても読んだと人に言える使い方をしたことはない。先生方も心当たりがあるのではないか。高名な医学部教授の先生方の自伝的回想に触れるたび、皆さん読破しておられるようで「自分とは別次元の先生方なのだな」と、繰り返しひしと感じたものだ。

 研修医時代に、清水の舞台から飛び降りる覚悟で、高額な原著を購入した。が、読み進もうとすると、とにかく考えさせる記述が多く、時間がかかりすぐに挫折した。調べたい疾患の概略を短時間に把握するには『セシル内科学』の方が便利だった。いつしか『ハリソン』の原著は部屋の片隅に隠れ、人に譲ったか可燃ごみで出したのか、消えてしまった。

 二度目に『ハリソン』を購入したのは非常勤講師となって医学生に講義しないといけなくなってからだったが、今度は日本語訳にした。原著16版に対応した日本語版第2版だった。結局のところ日本語版も、専門医をしている循環器の領域で、講義に使えそうな図表がないかといった読み方だった。ハリソン先生には大変申し訳ないと思った。

 ところで、ハリソン先生は同書の編著者一覧に名前が出てこない。なぜだか先輩に聞いたら、1978年に亡くなっていると教えられた。他界された後も、その思想を引き継いで改訂が続いているので、教科書には名前が冠されているとの話だった。初版が出た1950年から、連綿と改訂が今年で68年間も続けられ、20版に達したということだ。米国の医学書には人名を冠したものが多いが、彼らが初版以降、うまずたゆまず改訂し続けていることには、いつも驚愕する。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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