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Lancet誌から
医療の質で世界1位となったアンドラ公国とは

2017/06/09

HAQインデックスが最も高かったアンドラ公国の国旗

 5月18日にランセットのオンライン版に公開されたレポートによれば、世界疾病負担研究(GBD)2015データに基づいて世界195カ国の医療へのアクセスと質を評価したところ、日本は11位と振るわなかった[1]。

 同レポートでは米ワシントン大学保健指標・保健評価研究所(IHME)のChristopher J. L. Murray氏らが、IHMEやWHO、ハーバード大学など7機関の共同研究であるGBD2015のデータを用いて、世界195カ国における医療の質およびアクセスに関する1990~2015年の変化を解析した。

 具体的には、医療へのアクセスと質を評価する指標「Healthcare Access and Quality(HAQ)インデックス」(範囲0~100)を開発し、これを用いて195カ国の評価を行った。本インデックスは、質の高い医療が提供されていれば回避できたと考えられる回避可能死亡率を32の疾患分類ごとに求め、次に食事内容、BMI、身体活動状況などの行動・環境リスクへの曝露の影響を極力排除するため、リスク調整原因別の死亡率で補正したものだという。

 解析の結果、世界全体のHAQインデックスの平均値は1990年の40.7から2015年には53.7に増加したが、HAQインデックスが最も高い国と最も低い国との格差も、1990年の61.6ポイントから、2015年の66.0ポイントに拡大した。また、韓国、トルコ、ペルー、中国、モルディブは、1990~2015年の間にHAQインデックスの著明な増加(それぞれ24.1、24.9、23.7、24.7、29.6)が認められたという。

 HAQインデックスの上位5位は、アンドラ公国(94.6)、アイスランド(93.6)、スイス(91.8) スウェーデン(90.5)、ノルウェー(90.5)で、日本は11位(89.0)、英国は30位(84.6)、米国は35位(81.3)だった。

 アンドラ公国の存在を筆者は初めて知ったのだが、ピレネー山中でフランスとスペインに挟まれ、フランス大統領とスペインの司教を国家元首とする、17世紀に確立した人口8万人の国家とのこと。この国が、医療へのアクセスと質で世界一なのだそうだ。

 ところで、WHOはかつて、日本の医療制度は世界191カ国で1位と評価したのではなかったか?WHO発表の「World Health Report 2000」によると、日本は加盟国191カ国の中で第1位であり、今回のHAQインデックスで日本の上位に立ったスイスが2位、ノルウェーが3位だった[2]。判断の基準とされたのは、健康の到達度、健康の公平性、医療受診の公平性、人権の尊重と配慮、医療費負担の公平性の5項目とのことである。

 世界の医療事情に詳しい多摩大学大学院教授である真野俊樹氏の今年の著書でも、医療のレベル、医療の身近さ、投薬治療の状況、医療の値段、病院の環境、高齢化対策の6課題で評価すると、日本の医療レベルが世界一なのだそうだ[3]。

 一体どこに差がついているのか、HAQインデックスの中味を見てみた。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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