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繰り返される移植レシピエントの選定間違い
再開第1例でも発生、20年間改善されてない選定システムに構造的欠陥

2017/01/30

 1月27日、そのニュースを目にして、まるで筆者の誕生日を狙って天から贈られたプレゼントのごとく、驚き、震えた。レシピエント待機日数計算を誤ったため、本来心臓移植を受けられるはずだったレシピエント候補者がスキップされてしまい、待機していた後ろの順位のレシピエントに移植が行われていたとするニュースである[1]。

 プレゼントというのは不謹慎かもしれないが、そこまで思った理由を説明させてほしい。筆者は18年前、再開された心臓移植第1例の移植当日に起こった選定過誤に、移植内科医として関わっていたのだ。今回のニュースに接して、そのときの記憶が鮮明によみがえった。

 これは告発などではない。既に報道・記録されている事実である。選定過誤の経緯は「すぐに室長の駒村和雄医師が患者と家族に三回、ていねいに説明した」と新聞報道され(3月2日付朝日新聞)、臓器移植専門委員会による第1例の評価においても、選定過誤についての反省と対策が記録されている[2]。

 私が経験した当日の様子を再現してみよう。

 1999(平成11)年2月28日の日曜日。前日から国立循環器病研究センターのレジデント宿舎に泊まって待機しろとの指示を受けた筆者は、朝7時にけたたましく鳴るピッチにたたき起こされた。前年にセンター研究所室長になっていた筆者は当直を免除されていたので、病院に泊まり込むのは1年ぶりだった。

「コマちゃん、対策室来てくれる。ウチが1等賞なんよ」

「えっ?そんなはずじゃ。阪大が順位第1位じゃないんですか」

「とにかく来てよ」

 あわてて移植対策室に駆け付けると、臓器移植ネットワークから届いたばかりの分厚いFAXを移植対策室長補佐が繰っていた。

「おかしいですね。何故ウチが1番なんですか?」

 当時、国循と大阪大学は一体となって心臓移植を推進する協力体制を取っており、毎月双方の移植適応検討会にお互いが出席して症例検討を実施、待機患者の病状についても情報交換や治療に関するアドバイスを行っていた。なので、ステータス1という最も重症度の高い状態での待機期間も含めて、大阪大学の患者が全国症例の中で最長だろうと内部関係者は予想していた。

「あっ、そうか。高知赤十字のドナーは女性ですよね。きっと体重が軽いので、ウチの待機症例も小柄な人だから、体重が決め手になったんじゃないですか。FAX見せてください」

 適応するレシピエントの体重差は-20%~30%とされている。筆者はFAXを横取りして体重記載のページを探したが、見つからない。

「それより、さっさと病室に上がってレシピエント候補が手術を承諾するか返事をもらってくれ。45分以内に返事しないと、意思なしとみなされて次の候補者に話が行く」

 納得はゆかないまま、とにかく病室に上がった。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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