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Science誌、Lancet誌から
脳巨大化でマウスはヒト化?水頭症でも社会生活に問題なし?
大切なのは脳の容積なのか、ネットワークなのか

2015/04/18

レゴロボットのマインドストリームはセンサーからの刺激に応じて自律的に動いていた(WSJサイトより、画面はクリックで拡大)

 ネットサーフィンをしていて、たまたま“Scientists Upload Worm's Mind Into a Lego Robot”[1]というビデオを見る機会があった(右画面)。

 線虫(C. elegans)の神経細胞は302個しかないのに、物理刺激に対する回避運動のほか、学習や順応行動を示す。ビデオは、神経細胞間の接続関係(コネクトーム)をレゴロボットのマインドストームにプログラミングし、その後の行動を記録した動画だった。

 行動をあらかじめプログラミングすることなく、機械学習のような学習アルゴリズムを使うこともなく、センサーで取得した外界の刺激に応じて、自律的に行動している様子が示されている。これを見て、神経系でのネットワークの役割のすごさを認識した。

 ふと思い出したのが、水頭症に関する古い報告である。1980年、Science誌に「あなたの脳は本当に必要なのか?」との記事が掲載された[2]。英国シェフィールド大学小児科教授であるジョン・ローバー氏の、「水頭症によって大脳皮質の大部分が失われていても、患者は正常な生活が送れる」との主張が紹介されていた。

 定量的医学データが欠如しているので信憑性の保証はできないが、CTで1mmほどの厚みの大脳皮質だった学生の知能指数が126で、数学で首席を取ったという事例があるという。

 Science誌もいい加減な記事を載せるものだと忘れていた。ところがその後、Lancet誌にも似たような報告が載った。左足の脱力で受診した44歳男性が、水頭症で大脳皮質のほとんどを消失しているにもかかわらず、IQこそ75ではあるものの神経学的徴候はなく、結婚して2人の子供をもうけ、公務員として正常な社会生活を送っているという[3]。数cm幅に圧縮された大脳のCTとMRI像は、何回見ても衝撃的だ。

 NHKスペシャル、シリーズ 死ぬとき心はどうなるのか 立花隆“臨死体験”を追う、第3回「神秘体験と死を超えて~意識と夢のボーダーランド~」が先月放映されて、ヒトの意識の本体が「情報統合理論」で説明できるとの説を知った[4]。非専門家の小職が荒っぽく要約すると、脳内で活動中のネットワークの総体が意識を生み出しているという説だと受け取った。ネットワークがキーワードである。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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