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Diabetologia誌から
レガシー効果と「親の因果が子に報い」にある共通点とは
メタボリックメモリーの陰にあるエピジェネティクス

2015/04/04

 米国の私立大学、中でもアイビーリーグには、卒業生の親族や子孫を優先的に入学させるシステムがある。これも「レガシー(遺産)」と呼ばれ、多大な寄付金の原資や大学の広告塔になってくれる制度であるということを最近知った。エスタブリッシュメントと呼ばれる階層が、こうして再生産される。

 最近の日経メディカル Onlineにて、糖尿病専門医の試験教材にも出てくる「レガシー効果」に関する新知見が紹介されていた(糖尿病患者の血圧管理にも「レガシー効果」、2015.1.20JAMA誌から●厳格血糖管理のレガシー効果、生命予後にも、2015.1.22)。

 簡単に内容を紹介しよう。糖尿病に対し発症早期に厳格な血糖管理を行うと、後に標準的な治療に戻しても血管合併症などに対するリスク抑制効果が長く残存することが知られている。これはレガシー効果やメタボリックメモリーと呼ばれ、2型糖尿病を対象とした英国のUKPDS試験、1型糖尿病を対象とした米国のDCCT-EDIC試験などで報告がある。

 前者の記事は、2型糖尿病患者の血糖または血圧の強化治療による血管合併症の抑制を意図したADVANCE試験の延長試験において、血圧に関しても早期の積極治療によるリスク減少がその後長期間持続する、いわゆるレガシー効果を認めたとするものだ。また後者の記事は、1型糖尿病患者を約27年間追跡したDCCT-EDIC試験において、厳格な血糖管理を早期から受けた患者では、総死亡も有意に低率だったというものである。

 レガシー効果やメタボリックメモリーのメカニズムとして、これまで教科書的にはAGEs(Advanced Glycation End Products:終末糖化産物)によって説明されてきた。すなわち、グルコースなどの還元糖は蛋白質と非酵素的に反応して、シッフ塩基さらにはアマドリ化合物が形成される。

 ここまでは可逆的反応であるが、さらに高血糖状態が持続するとアマドリ化合物の一部が、不可逆的にAGEsを形成する経路へと進む。いったんAGEsが形成されると、後戻りすることは不可能である、と。

 糖尿病合併症の発症や進行に関して、別名「高血糖の記憶」とも呼ばれるメタボリックメモリーがこのような機序で関与しているというのは合点が行く。しかし、糖尿病への早期介入によってもたらされる血管合併症の抑制効果の長期持続に関しては、これだけでは説得力が不足していると感じていた。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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