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J Clin Invest誌、PLos One誌から
Apelinは肺高血圧だけでなく心不全にも効く
もう存在しないかもしれない循環器系の新たな創薬ターゲットになるか

2014/06/02

 Apelinという分子名は、古川哲史氏のブログ「基礎と臨床の架け橋」で教えていただくまで知らなかった(肺高血圧症の新たな治療標的が浮上、叢状病変形成に「apelin」が関与、日経メディカル循環器プレミアム、2013/2/1)。最近になって、apelinは肺高血圧だけでなく心不全をはじめ動脈硬化そして糖尿病など、循環器領域の疾患と深く関連することが続々と報告されているので取り上げてみたい。

 Apelinは脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの一種で、既にオーファン受容体として同定されていたAPJ受容体の内因性リガンドとして発見された。群馬大学の立元一彦氏らが16年前に牛の胃から分離精製し、胃酸分泌など消化管での多彩な作用が報告されている。そのapelinが、実は多様な心血管保護作用を有することから、最近になり有力な循環系創薬ターゲットの1つと目されるようになった。

 Apelinに関連して創薬ターゲットとして注目されるのが、アンジオテンシン1-7(Ang 1-7)とその産生酵素アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)である。アンジオテンシンII(AngII)の分解産物の1つであるAng 1-7は、その受容体Masと共に、血管拡張、血圧低下、ナトリウム利尿、血管平滑筋の増殖抑制などの作用を有し、AngIIタイプ1受容体(AT1R)を介した作用に拮抗する(図1)。

 (日経メディカル関連記事:アンジオテンシン-(1-7)の心保護作用、動物実験で示唆、2002/4/8;米国腎臓学会2009●ACE2による急性降圧、主要な機序はAng IIの減少、2009/11/20;欧州高血圧学会2010●血管内皮機能の保護作用持つ薬剤に注目集まる、2010/7/21)

 Apelinとその受容体APJ系はAPJがAT1Rと高い相同性を持つことからも、レニン・アンジオテンシン系(RAS)との関連が予想されていたが、apelinはこのACE2により不活化されることが示された。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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