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Circulation Research誌Reviewから
どこにでもある血圧計で心筋虚血傷害を治す
遠隔プレコンディショニングでCABG患者の予後も改善

2013/10/21

 世界中の研究者が創薬を目指してしのぎを削っていた虚血プレコンディショニングの臨床へのトランスレーションが、どこにでもある血圧計で実現してしまった。今回はCirculation Research誌に掲載された最新のレビューから[1,2]、その現状を探ってみた。

 1986年にMurry氏らによって発表された虚血プレコンディショニング[3]、すなわち「長時間の心筋虚血の直前に短時間の虚血再灌流操作を行うことによる虚血耐性の獲得」という概念は、その後10年間以上にわたり、世界中の循環器研究を席巻した。

 影響のスケールは循環器研究の領域に限られてはいたが、その領域では、まるでここ数年のiPS旋風のような怒涛の勢いだった。そしてまたiPS研究と同様に、わが国の研究者たちが次々と重要な研究成果を挙げていた。

 2つのテーマに共通するのは、(1)きわめて単純な実験操作で誰が行っても確実に結果を再現できたこと、(2)その結果が現存する他のいかなる手法でも不可能な生理作用を実現したこと――といえよう。

 虚血プレコンディショニングの効果とは心筋梗塞サイズを対照の半分程度にまで縮小させることなのだが、あろうことか、いかなる動物種においても、心臓のみならず脳・腎臓・肝臓など他の臓器においても、同様のプレコンディショニング効果が確認された。

 さらには、虚血再灌流直後の操作(ポストコンディショニング)や虚血臓器とは異なる部位での操作(遠隔プレコンディショニング)によっても、プレコンディショニングと同様な虚血再灌流傷害の抑制効果が確認されたのである。

 この虚血再灌流傷害に対するきわめて普遍的かつ強力な治療効果を薬剤で再現しようと、世界中の研究者がやっきになったのは当然だろう。しかし、ランダム化比較試験(RCT)で有意な効果を証明できそうな有望な薬剤は、いまだ見いだされていない(表1)。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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