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JAMA誌から
STOP-HF試験の結果と日本心不全学会のBNPステートメントを読み比べる
BNPカットオフ値の本当の使い方とは

2013/08/21

 人間ドックの受診者から、「心不全マーカーのこれって何なんですか」と脳性ナトリウム利尿ペプチドBNP)値の解釈を求められることは、読者の先生方にとって日常茶飯事と思われる。筆者もこの値を用いて、受診者自身への、そして何より主治医としていかなる行動変容を起こすべきなのか、長らく分からないままでいた。

 循環器バイオマーカーの達人でいらっしゃる佐藤幸人氏もご自身のブログで、「一見正常範囲と思われるようなわずかなBNP、NT-proBNP値の上昇であっても、それが将来の心血管イベントの予測因子であるという内容が相次いで報告されました」と記している(現場に活かす臨床研究●健診でBNP高値を指摘された患者が外来に。どう対応する?、日経メディカル オンライン 循環器プレミアム、2009.6.3)。これを読んで以来、重大な見落としやフォロー不足をしていないか、ずっと気になっていた。

 今年、日本心不全学会が「BNPに関するステートメント」[1]を発表したので、これで一件落着と思いきや、読んでみてそう簡単ではないことに気がついた(血中BNPやNT-proBNP値を用いた心不全診療の留意点を発表、日経メディカル オンライン 循環器プレミアム、2013.5.9)。本ステートメントにおけるBNP値の解釈は、「初めて心不全を疑ってBNP値を測定した症例を想定」したものだった。

 BNPについて佐藤氏は、「一般住民、慢性心不全患者、急性心不全患者においてそれぞれ診断とリスク評価の論文が多数報告されており、論文にもガイドラインにも無数のカットオフ値が報告されています」と書いている[2]。同じBNP値であっても臨床背景によって、その解釈は大きく異なってくるはずである。

 このような現状の中、プライマリケア医による通常のケアと、BNP値を利用して専門医も加わったケアを比較したランダム化比較試験であるSTOP-HF試験の結果が、JAMA誌2013年7月3日号に掲載された[3]。アイルランド・St Michael's HospitalのMark Ledwidge氏らによる研究で、既に「海外論文ピックアップ」にもその内容が紹介されている(JAMA誌から●BNP値に基づく介入で心不全リスクが低減、日経メディカル オンライン、2013.7.17)。

 無症候だが心血管危険因子を1つ以上持つ住民を対象にBNP値のスクリーニングを行い、50pg/mL以上になったらプライマリケア医と心臓専門医が協力して治療に当たると、無症候性左室機能不全や、心不全による入院を減らすことができたという結果である(ただし、死亡率には群間差を認めなかった)。

 レニン・アンジオテンシン系抑制薬の使用率が、ベースラインでは対照群・介入群ともに40%だったが、追跡期間中に介入群では14%増加したのに対し、対照群では8%の増加にとどまった。これも介入の効果だと、主任研究者のKenneth McDonald氏は説明している[4]。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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