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N Engl J Med誌PERSPECTIVEから
月並みな結論の地中海食研究がNEJMに掲載されたワケ

2013/05/21

 かなり以前から何度も、オリーブ油と果実やナッツ類の割合が多い地中海食は心血管(CVD)イベントの予防に有効であるとする観察研究の結果が発表されてきた。2013年4月、権威あるN Engl J Med誌に、糖尿病、高血圧、喫煙、肥満などCVDリスクの高い集団での一次予防に対する地中海食の効果を検討したPREDIMED研究の論文が掲載された[1]。

 心筋梗塞、脳卒中、心血管死の複合(MACE)である主要評価項目の相対リスクが30%も減少したというすばらしい結果のためか、それともハードエンドポイントを用いたランダム化比較試験(RCT)という「極めて厳密な研究」(Heartwire)のためか――。N Engl J Med誌はなぜ今、この論文を掲載したのかということに筆者は興味を持った。まずは抄録から、研究の概要を振り返ってみよう。

 地中海食を長期間摂取しているとCVDリスクは減少することが、これまでにコホート研究と二次予防試験から報告されている。今回、スペイン・バルセロナ大学のRamon Estruch氏らは、地中海食によるCVDイベントの一次予防に関するRCTを行った。

 スペイン国内での多施設共同試験である。CVDリスクは高いが、その既往はない被験者を、(1)エクストラバージンオリーブオイルを追加した地中海食群、(2)ミックスナッツを追加した地中海食群、(3)対照群(食物性脂肪を減らすようにとの指導あり)の3群に、ランダムに割り付けた。

 被験者は3カ月ごとに個人およびグループでの教育セッションを受け、群ごとに無料のエクストラバージンオリーブオイル、ミックスナッツ、食物以外のギフトを受け取った。主要評価項目は、心筋梗塞、脳卒中、心血管死の発生率とした。中間解析の結果から、4.8年(中央値)で中止された。

 7447人(55~80歳)が登録された。57%が女性で、地中海食摂取の自己申告とバイオマーカー分析によれば、2つの地中海食群のアドヒアランスは良好だった。

 主要評価項目のイベントは、288件発生した。対照群(109件)に対する多変量調整ハザード比は、地中海食+エクストラバージンオリーブオイル群(96件)で0.70(95%信頼区間[95%CI]:0.54-0.92)、地中海食+ナッツ群(83件)で0.72(95%CI:0.54-0.96)だった。食事に関連した有害事象はなかった。

 CVDリスクが高い被験者群においては、エクストラバージンオリーブオイルあるいはナッツを追加した地中海食によって、MACE発生率は低下した(下図)。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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