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Lancet誌Commentから
冠動脈疾患でCRPを測って、さて何をする?
CRP: star trekking the galaxy of risk markers

2011/04/05

 冠動脈疾患(CHD)と血管炎症との関連は以前から報告されており、炎症性バイオマーカーとして血清C反応性蛋白CRP)が注目されてきた。炎症が存在するとCHDに対するスタチンの有効性が高いことを示唆する研究は以前からあり、特にJUPITER試験[1]では、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値は正常でもCRP値が高い健康な成人にスタチンが有効だったとの結果になったことは記憶に新しい。

 心血管イベントリスクが高い成人を対象にスタチンの有効性を検討したランダム比較試験であるHeart Protection StudyHPS)は、本来2×2の要因デザインで、シンバスタチンとビタミン剤のそれぞれの有無を割り付けて、心血管イベントと発ガンに関して検討した試験である[2]。

 今回、HPSの研究者らは後付けで層別解析を行い、ベースライン時のCRP値およびLDL-C値によってスタチンの有効性が異なるかを調べた。この結果はLancet誌2月5日号に掲載された[3]。本論文は循環器プレミアムで既に紹介されている[4]が、いつものように概要を以下に紹介する。

 HPSでは40~80歳の男女2万536例が1994~97年に登録された。(1)閉塞性動脈疾患・冠疾患・糖尿病の既往、(2)65歳以上の男性、(3)高血圧の薬物療法を受けている――のいずれかに該当する症例を登録した。被験者は導入期間の後、シンバスタチン40mgの連日投与(1万269例)あるいはプラセボ投与(1万267例)のいずれかに割り付けられた。

 層別解析では、ベースライン採血時のCRP値により6群に分類し(1.25mg/L未満、1.25~1.99mg/L、2.00~2.99mg/L、3.00~4.99mg/L、5.00~7.99mg/L、8.00mg/L以上)、主要エンドポイントを主要血管イベント(冠疾患による死亡+非致死的心筋梗塞、脳卒中、血行再建の複合)として、intention-to-treat解析を行った。

 追跡期間は平均5年間であり、この間の主要血管イベント発生率は、シンバスタチン群が24%少なかった(シンバスタチン群2033例[19.8%] vs. プラセボ群2585例[25.2%]、ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[95%CI]:19-28)。

 主要エンドポイントやその構成疾患の発生率は、ベースライン時のCRP値によって有意な変化を見せなかった(P for trend=0.41)。CRP値が1.25mg/L未満の場合でも、シンバスタチン群の主要血管イベントは、有意に29%少なかった(シンバスタチン群239例[14.1%] vs. プラセボ群329例[19.4%]、HR:0.71、99%CI:12-43、P<0.0001)。

 CRPもLDL-Cも低値である場合はスタチンの効果が少ないという報告があるため、この研究で観察された中央値であるLDL-C値3.86mmol、CRP値1.6mg/Lを境界として、データをLDL-C低値・CRP低値群、LDL-C低値・CRP高値群、LDL-C高値・CRP低値群、LDL-C高値・CRP高値群の4群に分類し解析した。

 これらの4群においても、シンバスタチンによるリスク低下に有意差は見られなかった(P=0.72)。特にLDL-C値とCRP値が両者とも低い群であっても、シンバスタチンが明らかに有益だった(シンバスタチン群295例[15.6%] vs. プラセボ群400例[20.9%]、HR:0.76、99%CI:11-40、P<0.0001)。

 スタチンの種類が異なるものの、LDL-Cが1mmol/L減少した場合のCRP減少量が本試験では0.85mmol/L、JUPITER試験(ロスバスタチン使用)では1.2mmol/Lと同等だったことから、今回認められたスタチンのCRP減少作用は他のスタチンにも当てはまるだろうと著者らは推測した。
 

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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