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Arch Intern Med誌INVITED COMMENTARYから
心不全予防の降圧薬第1位は利尿薬といわれても
臨床試験をリアルワールドに翻訳する際の注意点

2011/01/01

 イタリア・ローマ大学のSebastiano Sciarretta氏らは、既報のランダム化比較試験(RCT)を対象にBayes流のネットワーク・メタ解析を行い、心不全予防のための第1選択降圧薬は利尿薬であると、2010年11月8日付のArch Intern Med誌オンライン版に発表した[1]。

 これまでに行われた多くの臨床試験からプラセボとの比較であればどの降圧薬でも、高血圧患者の心不全リスクは低減することが示されている。一方、種類の異なる降圧薬間の心不全予防効果の比較も行われているが、有効性のランキングができるような情報は得られていなかった。

 今回、新手法であるネットワーク・メタ解析(実は2002年頃から論文は発表されていたが、2010年に入って報告が急増している統計手法)を用いて、既に確立したとも思える利尿薬の有効性を再確認した本論文を切り口に、日本人に対する利尿薬療法を再考してみたい。

 論文自体は日経メディカルオンラインでも既に紹介されている(関連記事)[2]。内容を簡単に紹介しよう。

 1997~2009年に発表された、心血管リスクに対する降圧薬の効果を見ているRCT 824件をPubMedとEMBASEから抽出し、このうち65%超の高血圧患者と心血管リスクが高い患者を含み、症例数が200例以上で、心不全・心血管イベントの情報を含んでいた臨床試験26件を解析対象とした。

 対象となった26件の試験には計22万3313例が登録されていて、4万516例(18.1%)が利尿薬、9067例(4.1%)がα遮断薬、1万4564例(6.5%)がβ遮断薬、5万5805例(25%)がCa拮抗薬、3万3651例(15.1%)がACE阻害薬、2万7095例(12.1%)がアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、1万8606例(8.3%)がプラセボ、2万4009例(10.8%)が従来治療(実際にはβ遮断薬・利尿薬・Ca拮抗薬など)に割り付けられていた。このうち18万6378例(83.5%)が高血圧の診断を受け、8554例(3.8%)に心不全が発生した。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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