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JAMA誌Editorialから
ロシグリタゾンは市場から引き上げられるべきか
FDA諮問委員会は販売継続を支持したが・・・

2010/09/07

 ロシグリタゾン騒動(関連記事1)[1]はいまだに続いていた。ロシグリタゾンを承認した米食品医薬品局(FDA)のお膝元、薬剤評価研究センターのDavid J. Graham氏らは、同じチアゾリジン糖尿病治療薬であるピオグリタゾンとロシグリタゾンを後ろ向きコホート研究で比較、ロシグリタゾン使用により有意な心血管リスクの上昇を認めた[2]。この報告が掲載されたJAMA誌2010年7月28日版に同時掲載されたDavid N. Juurlink氏の論評[3]とともに最新のニュースも加え、ロシグリタゾンの安全性を取り巻く一連の疑念について考えてみたい。

 Graham氏らの論文は日経メディカルオンラインでも紹介されている(関連記事2)[4]が、概略を改めて紹介しておこう。

 65歳以上のメディケア受給者中、ロシグリタゾンまたはピオグリタゾンの使用者22万7571人を最長3年間(追跡期間の中央値は105日)追跡して、主要評価項目(急性心筋梗塞[AMI]、脳卒中、心不全、総死亡と、その複合イベント)を分析した。

 AMIは、ロシグリタゾン群に523件、ピオグリタゾン群には1223件発生しており、ロシグリタゾンのピオグリタゾンに対する調整ハザード比は100人・年当たり1.06(95%信頼区間[95%CI]:0.96-1.18)と、有意ではなかった。しかし脳卒中の調整ハザード比は1.27(同:1.12-1.45)と、有意にロシグリタゾン群が多かった。

 同様に心不全では1.25(同:1.16-1.34)、総死亡でも1.14(同:1.05-1.24)、AMIを含む複合イベントも1.18(同:1.12-1.23)と、ロシグリタゾン群が多かった。1年間の使用に伴う複合イベントの害必要数(Number Needed to Harm;NNH)は60(同:48-79)と推定された。Kaplan-Meier法による解析でもピオグリタゾンに比べロシグリタゾンの使用者では、脳卒中、心不全、総死亡と、複合イベントのリスクが有意に上昇していた。

 チアゾリジン系糖尿病治療薬にはそもそも糖尿病合併症を減少させる確固たるエビデンスがないにもかかわらず、ロシグリタゾン・ピオグリタゾンとも世界中で爆発的に売れ、両薬剤ともに末梢性浮腫と心不全の発生が報告されていると、Juurlink氏は説明する。浮腫はインスリン抵抗性改善をもたらすペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)の活性化が、遠位尿細管ではNaと水の再吸収を増加させるために発症する。

 2007年5月、Steven E. Nissen氏がメタ解析により、ロシグリタゾン使用者ではそれ以外の糖尿病治療薬使用者に比べ、心筋梗塞が43%、心血管死が64%、それぞれ有意に多いとN Engl J Med誌に報告[5]してから、ロシグリタゾンの安全性、特に心筋梗塞のリスク上昇に関する一連の報告が続いた。

 翻ってピオグリタゾンについては、心筋梗塞・脳卒中・心血管死を減らすかもしれないとのメタ解析の結果が発表になっている。診療データベースを用いてリアルワールドのデータを解析した複数の報告も共通して、ロシグリタゾンがピオグリタゾンよりリスクが高いとの結果を示している。
 

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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