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Arch Intern Med誌から
JUPITER試験に対する疑惑表明か、平衡感覚か
同一号に4編の論文、いずれも同試験の解釈は慎重を要すると主張

2010/08/09

 6月28日付のArch Intern Med誌に、JUPITER試験を巡る論文が4編も掲載された。そのいずれもが、44%もの1次エンドポイント減少と20%の総死亡抑制を示したJUPITER試験[1,2]の結果には不備があり、ロスバスタチンの心血管イベントに対する1次予防効果は過大評価で慎重な解釈を要するというものだった。

 日経メディカル オンライン 循環器プレミアムでは、この4論文の中で英国ケンブリッジ大学のKausik K. Ray氏らによるメタ解析[3]、およびそれについての米国ミシガン大学のLee A. Green氏の論評[4]を既に紹介している。今回はこれに周辺の情報も加えて、改めて考えてみたい。

 メタ解析について循環器プレミアムでは、「Arch Intern Med誌から CVD1次予防としてのスタチン、総死亡は減少せず」とのタイトルで報じた[5]。Ray氏らがJUPITERを含む11試験で1次予防効果についてメタ解析を行ったところ、研究間のバラツキを考慮するランダム効果モデルでも、考慮しない固定効果モデルでも、スタチンによる死亡率の有意な減少は認められなかった。

 糖尿病患者のみを対象とした試験を除外しても、死亡率の有意な抑制効果は見られなかった。この結果からRay氏らは、JUPITER試験での総死亡の20%減少とは、試験を早期に終了した場合に起こり得る誇張された結果ではないかと推測した[3]。

 論説[4]の中でGreen氏は、臨床試験の早期終了は有効性の過大評価とリスクの過小評価に結び付くことを関係者は分かっているだろうが、同時に、早期のマーケティングを可能にし、臨床試験の費用も節約できるなど、スポンサー企業はもとより研究チームにとっても大きな利益に結び付くこともよく分かっていると指摘した。

 同号に掲載された「論文」で最も過激だっだのが、フランス・ジョセフフーリエ大学のMichel de Lorgeril氏らによるものだった[6]。彼らは、JUPITERにかかわる主要人物の利益相反に重大な問題が潜んでいると、個人攻撃とも取られかねない主張を行った。

 14人の著者のうち9人が企業との経済的関係があり、論文の筆頭著者で試験責任者のPaul Ridker氏が高感度C反応性蛋白hsCRP)測定の特許を取得しており、データ安全性監視委員会委員長であるRory Collins氏が多数の企業主導の脂質低下試験にかかわっている――。

 臨床試験の科学上の問題点よりも、関係者たちの「strong commercial interest in the study」について、当のRidker氏が「一体どこが研究論文なんだ。データは何もなく、ただ意見を述べているだけじゃないか」[7]と憤慨するような内容の論文だった。
 

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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