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Lancet誌 Commentから
フィブラートの使用はオーダーメード医療の第1歩?
糖尿病合併例に多い高TG・低HDL-C患者では確実な利益

2010/07/20

 フィブラート脂質異常症治療薬の心血管イベント抑制効果は、まだ確立していなかった。抑制効果を示したのはHelsinki Heart StudyとVA-HIT Studyのみで、ほかの試験は心血管イベントの抑制効果を示していない。そこで、高中性脂肪(TG)血症、低HDL-C(高比重リポ蛋白コレステロール)血症を合併した2型糖尿病におけるフィブラートの有効性を検討するFIELD試験が実施された。

 だが同試験では、1次エンドポイントで優位性を証明できなかった。これを受け英国の医薬品監督庁(MHRA)は2007年、フィブラートを第1選択薬として使うのは弧発性の重度・高TG血症だけで、混合型脂質異常症の患者に用いるのはスタチンなどの有効な治療薬が禁忌、あるいは不耐である場合に限定すべきとの見解を発表した。

 今年になり、スタチンとフィブラートの併用はスタチン単独を上回るかを評価したACCORD-Lipid試験の結果が発表された(関連記事1)[1]。しかし残念ながらその結果は、併用療法もスタチン単独療法に勝るものではないということだった。

 今回、オーストラリア・シドニー大学のMin Jun氏らは、フィブラートの心血管イベント抑制効果についてメタ解析を行い、フィブラートによって得られる利益はそれほど大きくないが、TG高値の患者においては臨床的に意義のあるリスク減少が見られると、Lancet誌2010年5月29日号に報告した[2]。また、同誌上でフランス・リール大学のBart Stael氏が同論文を論評したので[3]、関連事項と共に紹介しよう。

 Jun氏らのメタ解析の結果は、既に日経メディカルオンラインでも報告されているが(関連記事2)[4]、その概略を記しておく。

 1950年から2010年3月までに出版された研究の中で、心血管イベントに対するフィブラートの影響をプラセボと比較していた前向きの無作為化試験を18件選出し、主要心血管イベント(心筋梗塞と脳卒中)・冠イベント(心筋梗塞と冠疾患死亡)・脳卒中・心不全・冠動脈血行再建術・総死亡・心血管死亡・血管疾患以外による死亡・突然死・新規発症アルブミン尿・薬剤関連の有害事象などの臨床転帰を解析した。

 フィブラート治療による相対リスク減少(RRR)は、心血管イベントが10%(95%信頼区間[95%CI]:0-18%、P=0.048)、冠イベントが13%(95%CI:7-19%、P<0.0001)だった。非致死的冠イベント(RRR:19%、P<0.0001)、冠動脈血行再建術(RRR:12%、P=0.025)、新規発症アルブミン尿(RRR:14%、P=0.028)についても、有意な結果が得られた。

 しかし、脳卒中のリスク減少は有意な結果にならず、総死亡・心血管死亡・突然死・血管疾患以外による死亡においても、有意差は認められなかった。フィブラート投与による薬剤関連有害事象の有意な増加は見られず、横紋筋融解症リスクの有意な上昇も見られなかった。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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