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Ann Intern Med誌EDITORIALから
ロスバスタチンは本当に万能薬なのか
多様な2次解析でも効果を次々に証明、欧米では1次予防へ適応拡大

2010/06/03

 ロスバスタチンによる動脈硬化イベント1次予防効果を実証したJUPITER試験[1](「ACC2008●木星ないしは雷神という名の“衝撃波”が世界を襲った」)は、その後のさまざまな2次解析でも好成績を連発している。静脈血栓塞栓症の1次予防効果([2]「NEJM誌から●スタチンは静脈血栓塞栓症リスクも43%減らす」)、脳卒中に対する1次予防効果[3]、女性における心血管イベント1次予防効果[4]、慢性腎臓病(CKD)における1次予防効果[5]などである。

 今回、米Brigham and Women's 病院のRobert J Glynn氏らによる、70歳以上の高齢者を対象に2次解析した結果がAnn Intern Med誌4月20日号に掲載された[6]。同誌同号では米Johns Hopkins大学のSusan J Zieman氏らがその結果を論評しているので、関連情報とともに紹介する[7]。

 Glynn氏らの2次解析の内容については、日経メディカルオンラインでも米国心臓学会(ACC2009)での発表時(「LDL値正常/CRP高値の高齢者へのロスバスタチン投与は一次予防効果あり」)、および論文掲載時(「Ann Intern Med誌から●脂質正常の高齢者もhsCRP高値ならスタチンで利益」)に概要を報告しているが、以下に簡単に触れておく。

 JUPITER試験の本体は、50歳以上の男性または60歳以上の女性であって、心血管疾患と糖尿病がなく、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値は130mg/dL未満だが高感度C反応性蛋白(hs-CRP)は2.0mg/L以上と高値を示す1万7802例(平均年齢66歳)を対象に、1対1でロスバスタチン(20mg/日)群または偽薬群に割り付け、初回心血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、動脈血行再建術、不安定狭心症による入院、心血管死亡を合わせた複合イベント)の発生を最大5年間(中央値1.9年)追跡したものである[3]。

 今回のGlynn氏らの2次解析では、このうち70歳以上(中央値は74歳)を解析対象とした。結果は100人・年当たりの複合イベント発生率は、ロスバスタチン群が1.22、偽薬群が1.99、ハザード比は0.61(95%信頼区間[95%CI]:0.46-0.82、P<0.001)となり、39%のリスク低減が認められたという。4年間の治療で複合イベントを1件回避するための治療必要数は、70歳以上が24(95%CI:15-57)、70歳未満が36(95%CI:23-77)だった[1]。

 総死亡についてはロスバスタチン群と偽薬群が100人・年当たり1.63と2.04、ハザード比は0.80(95%CI:0.62-1.04、P=0.090)となり、偽薬群との間に差はなかった。重症有害事象の発生率を偽薬群と比較したところ、全体としてのハザード比は1.05(95%CI:0.93-1.17)で、有意差は認められなかった。個々の有害事象の発生率についても、偽薬群との間に有意差は見られなかった。

 中央値2年間の短い追跡期間であるにもかかわらず、1次エンドポイントとした複合イベントについて39%のリスク減少を認め、心筋梗塞あるいは脳卒中に限れば45%のリスク減少となった。この点についてEDITORIALでZieman氏らは、「高齢者でのこのようなリスク減少は非常に印象的であって、スタチンの多面的作用を示唆するのかもしれない」と好意的に評価しながらも、次項に示す4つの疑問点を指摘した[2]。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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