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Lancet誌Commentから
救急搬送中の上腕圧迫で心筋梗塞が縮小:実証された「リモコン効果」
Giving the ischaemic heart a shot in the arm

2010/04/06

 急性心筋梗塞では再潅流療法の普及によって予後は改善されたものの、致死的再潅流障害による梗塞サイズ縮小効果の減弱は克服できていない。

 動物モデルにおいては、心筋虚血・再潅流の繰り返しを、長期虚血の前(preconditioning)あるいは虚血後再灌流のごく初期(postconditioning)に行うことで、心筋梗塞サイズは30~70%に減少すると報告されている。

 だが臨床的には、小規模な仮説検証研究によって、preconditioningが致死的再潅流障害を防止し心筋梗塞サイズの縮小をもたらすことを示すにとどまっていた[1]。

 また心臓だけでなく、腎臓・腸管の一時的虚血が全身的保護作用を有し、引き続く長時間心筋虚血後の再潅流障害に対し保護作用を示すことが実験的に示されてきた[1]。

 さらに臨床的には、上肢や下肢の遠隔虚血preconditioning(remote ischemic conditioning;これを「リモコン効果」と呼ばせていただく)が、待機的手術や血管形成術施行時の心筋障害を抑制することが示されている[1]。メカニズムはいまだ不明だが、アデノシン・ブラジキニン・各種オピオイドなどを介した神経体液性の機序が想定されている[1]。

 Lancet誌2010年2月27日号でデンマークAarhus大学Skejby病院のHans Erik Botker氏らは、急性心筋梗塞が疑われる患者に対する搬送中の上肢の遠隔虚血preconditioningが、primary PCI施行後の心筋救済を改善し安全性も良好なことを前向きの無作為化試験で示した[2]。同号においてフランス・リヨン大学のOvize氏らが、論評を行っている[3]。

 Botker氏らの検討では、初回心筋梗塞が疑われる18歳以上の患者333例を登録、primary PCI施行前に遠隔虚血preconditioningを行う群(166例)もしくはprimary PCIのみを行う群(167例)に無作為に割り付けた。

 遠隔虚血preconditioningは、病院への搬送中に上腕に血圧測定用のカフを装着し、5分間加圧(200mmHg)した後5分間開放するという操作を4回繰り返した。

 主要評価項目はprimary PCI施行後30日目における心筋救済係数とし、救済された心筋量のリスク領域内での割合を心筋シンチ潅流画像で評価した。分析はper protocol based解析(厳密にプロトコール逸脱例を除外する方法)で行った。

 遠隔虚血preconditioning群73例とprimary PCI単独群69例が解析の対象となり、心筋救済係数の中央値は、遠隔虚血preconditioning群が0.75と、primary PCI単独群の0.55に比べ有意に改善された(差の中央値:0.10、P=0.0333)。

 心筋救済係数の平均値はそれぞれ0.69、0.57であり、やはり遠隔虚血preconditioning群が有意に優れた(差の平均値:0.12、P=0.0333)。重篤な有害事象として、死亡が両群ともに3例ずつ、再梗塞が1例ずつ、心不全が3例ずつ認められた。

 以上よりBotker氏らは、急性心筋梗塞が疑われる患者に対する搬送中の遠隔虚血preconditioningは心筋救済を改善しかつ安全性も良好であると結論し、遠隔虚血preconditioningの臨床的予後に及ぼす効果を確立するために、より大規模な臨床試験を実施する価値があるとした[2]。

  

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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