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J Am Coll Cardiol誌EDITORIAL COMMENTより
BNPをどこまで下げれば、よい心不全治療なのか
Natriuretic Peptide-Guided Therapy for Heart Failure: Ready for "Battle" or Too "Scarred" by the Challenges of Trial Design?

2010/02/02

 今回は、ニュージーランド・Otago大学のJohn G. Lainchbury氏らが報告したBATTLESCARRED試験の結果[1,2]に対する、米国退役軍人医療センターのAlan Maisel氏による論説[3]を紹介しよう(どちらもJ Am Coll Cardiol誌2010年1月5日号に掲載)。

 これまでのナトリウム利尿ペプチド(NP)関連の臨床試験で、NPが心不全の診断・重症度・予後評価に有用であることは確立している。だが、心不全患者の「個別化」治療にNPが使えるのかについては、いまだ答えがないとMaisel氏は指摘する。本記事の表題を「BNPをどこまで下げれば」としたが、患者個人ごとに設定できる最適NPレベルの答えは、まだ得られていない。

 既に日経メディカル オンライン 循環器プレミアムでは、佐藤幸人氏がBATTLESCARRED試験を詳しく解説しているので(こちら)[2]、本稿では概略の紹介にとどめる。

 脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N末端フラグメントNT-proBNP)が150pmol/L(1300pg/mL)以上の心不全患者364例を、無作為に3つの治療グループ(プライマリケア治療群、NT-proBNPを用いるNPガイド集中治療群、心不全スコアを用いる臨床ガイド集中治療群)に割り当てた。

 1年死亡率については、NPガイド集中治療群と臨床ガイド集中治療群が、プライマリケア群より低値だった。3年死亡率については、75歳以下の集団に限ると、NPガイド集中治療群がプライマリケア群と臨床ガイド集中治療群より低値だった。

 75歳未満ではNPガイドが有効だが75歳以上では無効というのは、一見懐疑的に見えるが説明はつく。加齢によって心血管系も生物学的変化を来すだけでなく、多くの点で高齢患者は中年までの患者と異なるためだ。

 また、臨床試験の対象となる患者の年齢はリアルワールドの心不全患者の年齢を代表していないため、高齢者のデータは少ない。さらに、臨床試験で有効性が確立している薬剤であっても、常に高齢者で有効とは限らない。なおかつ、高齢者では心不全治療それ自体、より若い患者層のようには積極的に行われていない。高齢者で大半を占める駆出率正常の心不全に対する治療法は、いまだ確立していない。

 

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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