最近、プログラム(人工知能ではない)による診断を扱った論文の論評が2本続いた。興味深いので、2回にわたって取り上げてみたい。
カナダ・トロント大学救急医学のBrian Steinhart氏らによる急性心不全(AHF)診断の数学モデルが、10月13日付のAm J Coll Cardiol誌に報告された[1]。ノルウェー・Stavanger大学病院のKenneth Dickstein氏が同誌Editorial上で、モデルの有用性について論じている[2]。
Steinhart氏らの数学モデルは臨床所見(カテゴリー値)と脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)測定値(連続値)を組み合わせるもので、IMPROVE-CHF試験のデータを使用してモデルを構築し、PRIDE試験のデータで妥当性を検証したものだ。
特に臨床所見が中間的な確率しか与えない場合に、この数学モデルが正確な診断を提示するという。Steinhart氏らは、そのような症例ではモデルがAHFの尤度比の高低を適切に区分けしたと報告した。
数学モデルは以下の多項式で表される。
駒村和雄の「健康寿命で行こう」
Am J Coll Cardiol誌EDITORIAL COMMENTから
まだまだ救急医は楽できない(1)急性心不全
Diagnosing Acute Heart Failure: The Mathematician and the Clinician
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著者プロフィール
駒村 和雄(尼崎永仁会クリニック)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。ハーバード大学留学などを経て98年から国立循環器病センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授。2022年、尼崎永仁会クリニック(兵庫県尼崎市)診療部長。

連載の紹介
駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。
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