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Ann Intern Med誌EDITORIALから
心房細動に対してワルファリンは処方しすぎなのか?
Do Current Guidelines Result in Overuse of Warfarin Anticoagulation in Patients With Atrial Fibrillation?

2009/10/05

 Ann Intern Med誌9月1日号に、米・マサチューセッツ総合病院のDaniel E. Singer氏らによる、塞栓症予防効果と出血性副作用とを比較したワルファリンの純便益に関する論文[1]が掲載された。その論文について、米・テキサス大学のRobert G. Hart氏らが同誌EDITORIALに投稿した論評[2]を考察してみよう。

 原論文は、日経メディカル オンライン 循環器プレミアムで紹介されている(こちら)[3]。簡単にいえば、ワルファリンの純便益は、脳卒中の危険因子を有する患者で大きく、中でも虚血性脳卒中の既往を有する患者(2.48%/年)、および85歳以上の高齢者(2.34%/年)で最大だったという報告である。

 心房細動による脳塞栓症の発症リスクを示すCHADS2スコアで表現すれば、0または1の患者では純便益はゼロだったのに対し、4~6の患者では2.22%/年の利益があったという。

 EDITORIALのポイントは3点あった。原論文中では純便益を、(ワルファリン治療なしの血栓塞栓発症率 - ワルファリン治療下の血栓塞栓発症率) - 重み付け係数×(ワルファリン治療下の頭蓋内出血発症率 - ワルファリン治療なしの頭蓋内出血発症率)で計算していた。ポイントの第1は、この式で差し引く負の便益に頭蓋外出血を含めていたら、ワルファリンによる純便益はさらに小さくなっていた可能性があるということである。

 第2に、患者の脳卒中リスクで層別化した純便益を評価したという、原論文の重要性が強調された。第3に、原論文はこれまで単純に信じられてきたワルファリンの便益についての根本的な再評価であって、同様の結果が他の集団でも確認された場合には、ガイドラインを修正すべきだとした。

 EDITORIALで言及されたACC/AHA/ESCの2006年のガイドラインでは、図1のように便益は層別化されておらず、心房細動に対するワルファリンの便益は疑いようがなかったわけだ[4]。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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