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J Am Coll Cardiol誌Editorialから
血糖コントロールは“ど真ん中”を狙え
Aiming for the Best Control of Glycemia in Patients With Heart Failure and Type 2 Diabetes:The "Sweet Spot"

2009/08/25

 J Am Coll Cardiol誌7月28日号で米ベイラー大学のDavid Aguilar氏らは、糖尿病を合併する心不全患者における血糖管理と死亡率の関連を見た後向き観察研究の結果を報告した[1]。この論文について同じ号で、米ジョスリン糖尿病センターのLarry A. Weinrauch氏が論評している[2]。

 原論文は、退役軍人医療センターの外来で治療を受けた糖尿病合併の心不全患者を対象に、ベースラインのHbA1c値(研究に登録した1年前から2週間後までの間に測定)を五分位に分け、その後2年間の総死亡および心不全入院のリスクとの関連を調べたものだ。

 死亡率は第1五分位(Q1、HbA1c<6.4%)が25%、第2五分位(Q2、6.4%<HbA1c<7.1%)が23%、第3五分位(Q3、7.1%<HbA1c<7.8%)が17.7%、第4五分位(Q4、7.8%< HbA1c<9.0%)が22.5%、第5五分位(Q5、HbA1c>9.0%)が23.2%という結果になった。

 期待に反して、最良の血糖管理であるはずのHbA1cが最も低いQ1群の死亡率は、HbA1cが最も高いQ5群と同等だった。中間的な血糖管理だったQ3群の死亡率が結果的に最も低く、ハザード比にしてQ1群の0.73だった。心不全入院率に関しては、各分位群間で有意差はなかった。

 HbA1cが最も低いQ1群では糖尿病合併症と投薬数は相対的に少なく、左室駆出率(LVEF)はほぼ正常、末梢動脈疾患と心不全入院も相対的には少なかった。しかし一方で、平均年齢は比較的高く、糸球体ろ過率は低く、貧血とCOPDが多く、スタチンやACE阻害薬の使用は少なかった。本群ではSU薬単独治療が多く、ほかの血糖降下薬の使用は比較的少なかった。だが、背景因子(GFR、ヘモグロビン、脂質、LVEF、過去入院歴)は結局のところQ3群と同様で、死亡率を増大させる特別なものは見当たらない。Q1群とQ3群の最大の差は、ベースラインのHbA1c値にほかならない。

 これに対しQ5群では、年齢は若く、糖尿病合併症が多く、末梢動脈病変と脂質異常を伴い、インスリン濃度とビグアナイド薬(血糖降下作用はSU薬より弱い)の比率が高かった。よって、この群の死亡率が高いことは納得できる。

 研究の限界について言えば、本研究は退役軍人が対象だったので女性が少なかった。一般的には女性糖尿病患者の方が、HbA1cは低いが心血管イベントのリスクが高い。本研究では死因が不明なため、HbA1cと死亡率の間の関連を推測することが困難である。しかし多くの患者が低血糖を惹起しやすい種類の糖尿病薬を服用していたことから、低血糖と死亡率の関連が疑わしくはある。

 

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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