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N Engl J Med誌Perspectiveから
臨床現場でプラスグレルをどう使うか
Prasugrel in Clinical Practice

2009/08/10

 Brigham and Women's HospitalのDeepak L. Bhatt氏は、7月15日にインターネットで公開されたN Engl J Med誌Perspectiveで、プラスグレルの臨床使用についての見通しを語っている[1]。プラスグレルは7月10日、経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けた急性冠症候群(ACS)患者における血栓性心血管イベントリスク抑制の適応で、米食品医薬品局(FDA)の承認を得た。

 エフィエントという商品名が冠された同薬剤は宇部興産と第一三共が開発し、第一三共と米・イーライリリーが臨床試験を行った日本発の抗血小板薬である。今年2月には欧州で承認され、4月には世界で初めて英国で発売が開始された。

 PCI、なかでもステント留置術の普及は、血小板上のADP受容体P2Y12を阻害するチエノピリジン系抗血小板薬のチクロピジンなしに語ることはできない。だが好中球減少症や胃腸障害など重篤な薬物有害反応のため、現在では同じチエノピリジン系抗血小板薬のクロピドグレルに取って代わられている。

 クロピドグレル単独療法はアスピリン単独に比べ、心筋梗塞・脳梗塞・末梢動脈疾患に対して有意に効果が優れていたが、高価であるためアスピリン不耐症にだけ使用されてきた。しかしその後、ステント治療を行った患者に対するアスピリンとクロピドグレルの12カ月間の併用が、アスピリン単独に比べ有効であることが示された。

 プラスグレルは、より効果の高い活性代謝物が血小板に作用しADP受容体を阻害するため、チクロピジンやクロピドグレルよりも強力に血小板活性化を抑制する。プラスグレルはより有効に虚血イベントを減らすものの、出血のリスクは増える。その懸念はTRITON-TIMI 38試験[2]で検証された。実際の臨床現場ではさらに出血リスクが高まる危険があるため、FDAは添付文書に黒枠で警告するよう指示した。

 TRITON-TIMI 38試験とは、PCI施行予定の中~高リスクACS症例を対象に、抗血小板薬の併用療法(アスピリン+チエノピリジン系薬剤)について、プラスグレルとクロピドグレルとを比較した臨床試験である。プラスグレルはステント血栓症を含む虚血性イベントを有意に抑制したものの、致死的出血を含む重大な出血リスクが上昇した。死亡に関しては、クロピドグレルと有意差は認められなかった。出血リスクは特に、高齢者・低体重・脳卒中あるいはTIAの既往を持つ患者で高かった。

 出血リスク軽減のため、体重60kg未満では、通常投与量の2分の1である5mgが推奨されるが、5mgでもクロピドグレルより有効だった。75歳以上に対してプラスグレルは推奨されないが、糖尿病や心筋梗塞の既往者に対しては、考慮されてもいいだろう。

 プラスグレルを減量しても有効性が維持されるのか、クロピドグレルにスイッチした方が安全なのかについてのエビデンスはまだない。現在ポイント・オブ・ケア・テストで血小板機能を測定しながら投与量を調節する臨床試験が進行中なので、虚血と出血のトレードオフを、この手法が明らかにするかもしれない。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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