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Ann Intern Med誌Reviewから
β遮断薬による心不全の死亡率改善効果は心拍数減少度に依存
Meta-analysis: β-Blocker Dose, Heart Rate Reduction, and Death in Patients With Heart Failure

2009/07/01

 安静時の心拍数心不全の予後規定因子であることは既に知られているが、心不全に対するβ遮断薬の予後改善作用が投与量に関連するのか、あるいは心拍数低下の程度に関連するのかについては、いまだ明らかではない。β遮断薬の用量は副作用発現と関連があり、さらに心不全の非専門施設においてはガイドライン上の目標用量まで到達できる患者は実際少ないので、この問題は臨床的に重要である。

 CIBISやCOMET、CIBIS II研究のサブ解析では、心拍数低下作用がβ遮断薬の有効性に関連していた。しかしそれ以外の研究では、このような関連を認めていない。そこでカナダ・アルバータ大学のMcAllisterらは、心不全に対するβ遮断薬の治療効果が投与量と関係するのか、それとも心拍数低下の程度と関係するのか明らかにする目的でメタ解析を行い、その結果を6月2日付けのAnn Intern Med誌に総説として発表した。

 データは、MEDLINE(1966~2008)、EMBASE(1980~2008)、CINAHL(1982~2008)、SIGLE(1980~2008)、Web of Science、the Cochrane Central Register of Controlled Trialsによった。intention-to-treat カテゴリーに抽出された心不全患者の全死亡率に対する、β遮断薬の効果を検討した。治療前後での心拍数を比較して心拍数低下効果を算出し、β遮断薬群の心拍数変化量からプラセボ群の心拍数変化量を差し引いた。対象となったβ遮断薬はメトプロロール、カルベジロール、ビソプロロール、アテノロール、Bucindolol、Nevivololである。

 解析には、DerSimonian-Laird random-effects modelを使用した。(訳註:各研究の効果の大きさが均質でなくバラツキを含んでいるというrandom-effects modelにおいて、DerSimonian-Laird法を使用してリスク差を検定というもの)。効果の大きさの不均一性(heterogeneity)の指標として、CochranのQ統計量とI2統計量を計算した。

 本研究ではI2統計量について、25%未満を「低不均一性」、25~50%を「中不均一性」、50%以上を「高不均一性」と称した(訳註:I2統計量は0~100%の値を取り、各研究のオッズ比間の分散のうち、不均一性によって説明される部分を示す。通常は25%以下をabsence、50%以下をmoderate、75%以下をlarge、100%までをextremeと捉えることが推奨されている)。

 548の候補研究から最終的に23研究が選択された。21研究は左室駆出率(LVEF)が40%以下だった。2研究は非虚血性心不全のみ、2研究は虚血性心不全のみ、残り19研究のうち虚血性の原因のものは59%だった。

 β遮断薬の対照群はプラセボだったが、ACE阻害薬を用いたものが2研究あった。ACE阻害薬の使用率は93%、ジゴキシンの使用率は75%だった。LVEFは24%(12~36%)に分布した。合併症を報告した数研究では、心房細動は12~35%、糖尿病は12~36%だった。NYHAIII~IVが54%を占め、多くの研究は12カ月以内の短期間の追跡だった。

 サブグループ解析を行ったものは8研究しかなく、6研究内ではサブグループ間の差異は認められなかった。BEST研究では非黒人で黒人に比べ生存率改善を認めたが、それ以外の研究では黒人と非黒人の差は出ていないので、一貫性のある結論ではない。CIBIS研究では非虚血心不全で虚血性心不全に比べ有意に有益との結論が出たが、全研究の病因別アウトカム解析では、非虚血性と虚血性で生存率に差はなかった。またSENIOR研究、US Carvedilol研究、MERIT-HF研究では、LVEFの低い患者ほどβ遮断薬による生存率改善が高くなる傾向にあったが、全研究を対象にすると一貫した傾向とはいえなかった。

 

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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