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Circulation誌Editorialから
院外心停止者の救命率向上のため“CBA”の心脳蘇生へ
Do modifications of the American Heart Association guidelines improve survival of patients with out-of-hospital cardiac arrest?

2009/06/16

 5月19日付けのCirculation誌Editorial[1]で著者のGordon A. Ewy氏は、同号に掲載された米国ジョージタウン大学のAlex G. Garza氏らの論文「Improved patient survival using a modified resuscitation protocol for out-of-hospital cardiac arrest.(胸骨圧迫を中断しないことを強調するプロトコールによって、病院外心停止後の生存率を改善できる)」[2]を論評している。

 原論文の内容は、後向きコホート研究ではあるが、(1)病院外心停止例、(2)初期リズムが心室細動、(3)目撃者が存在――という条件を満たす成人傷病者の生存率が、蘇生プロトコールの変更によって、退院時までの生存率が22%から44%に改善したという報告だった。

 2003年1月1日~06年3月31日の期間(2000年ガイドラインによる対照コホート)と、06年4月1日~07年3月31日の期間(2005年改訂プロトコールによる介入コホート)における、病院外心停止患者を比較した。

 原論文の研究は、挿管を試みる前に200回の胸骨圧迫を3ラウンド以上行い、圧迫と換気の比率を50対2に維持して、換気のための中断を最小限にするために積極的な換気は制限することを救命者に義務づける新蘇生プロトコールを、救急医療隊員に訓練して行った。その結果、全生存率は7.5%から13.9%に向上した。

 循環器専門医をお持ちの読者はAHA/ACLSプロバイダーコースを受講済みなので、釈迦に説法となることをお許しいただきたいのだが、05年の救命処置ガイドラインの主要改訂ポイントは以下のようにまとめられる。

(1)早期の気管内挿管と陽圧換気の強調を取り消し
(2)即座の除細動と除細動の繰り返しを取り消し
(3)胸骨圧迫を中断しないことを強調し
(4)除細動後は直ちに胸骨圧迫を再開してエピネフリンを早期に投与することを強調する

 蘇生プロトコールの内容以前に、目撃者による心肺蘇生の早期開始と救急隊の迅速な到着が救命処置の成功の鍵ではあるが、Ewy氏によれば、米国内の多くの地域において救命処置は理想からほど遠く、院外心停止患者の生存率は最適なものであるとは言えないという。そこで上記のような胸骨圧迫に重点を置いたプロトコールへの改訂が行われた。その改訂がどれほどの成果を上げたのかが、今回の原論文というわけだ。

 原論文の研究は一次心停止に対する心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation)に対して、今回の新しい「心脳蘇生(cardiocerebral resuscitation)」法で生存率が顕著に改善することを示した3つ目の研究であると、Ewy氏は紹介した。つまりEwy氏らが共同で06年に報告した「心脳蘇生」法の効果[3]を、今回の研究は追認したということだ。

 

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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