日経メディカルのロゴ画像

No.23
運動のやりすぎによってペースメーカ電流が減る

渡邉英一氏

 マラソンやツールドフランスのような耐久型スポーツ(endurance sports)を行うアスリートは同年齢の人に比べて徐脈傾向にある。このような人々はその後、洞不全や房室ブロックなどを発症し、心臓ペースメーカが必要になることが多く、また心室性不整脈が多発することが知られている1)。これまで、アスリートにみられる徐脈の機序として運動の結果による迷走神経緊張亢進が想定されていた。しかし、Boyettらは、アスリートのintrinsic heart rateが同年齢の人に比べて低下していることに気付き2)、これは「洞結節のペースメーカ電流が減少しているためである」と仮説をたてて検証した。

【論文】
D’Souza A, et al.
Exercise training reduces resting heart rate via downregulation of the funny channel HCN4.
Nature Communications 2014; 5: 3775.

 洞結節細胞の自動能は、電位依存性のイオンチャネルと心筋細胞内のCa濃度の変化によって生み出される。イオンチャネルのなかでペースメーカ電流として大きな役割を果たすのは、過分極活性化内向き電流である(funny currentの略でIfと呼ばれる)。そこで、動物にトレーニングをさせ、ペースメーカ電流について検討した。

【方法】
 ラットとマウスの両者を用いた(本稿ではマウスのデータのみを示す)。ラットは12週間にわたってトレーニング(傾斜角25度のトレッドミル、1時間/日、週5日)をさせ、マウスは4週間にわたって水練を行った(半径約10cm、深さ35cmのバケツを使用、1時間/日で2回、週7日)。対照は、運動をさせずに飼育ケージで穏やかな生活を送らせたものである。皮下に心電計を植込んで心拍数のモニターを行った。薬理学的自律神経ブロックにはアトロピンとプロプラノロールを使用し、Ifブロッカーのイバブラジンを使用した。

【結果】
 トレーニングマウスの心拍数はIn vivoでもIn vitroにおいても対照より有意に低下していた(図1A)。薬理学的、および解剖学的な自律神経ブロックを行ったが、いずれもトレーニング群では心拍数が低下していた(図1B)。交感神経活動と迷走神経活動の程度を比較すると、トレーニングの有無にかかわらずこれらに有意差はないことが示された(図1C)。

著者プロフィール

●井川修(日本医大多摩永山病院内科・循環器内科臨床教授)●尾野恭一(秋田大生理学教授)●古川哲史(東京医科歯科大難治疾患研究所教授)●村川裕二(帝京大付属溝の口病院第4内科教授)●渡邉英一(藤田保健衛生大内科学講師)[五十音順]

連載の紹介

What’s New in Electrocardiology by JSE
不整脈学や心電図学の主要雑誌の中から、その道の第一人者が「なるほど」とうなった新着論文をピックアップ、新しい知見のポイントを分かりやすく解説します。

この記事を読んでいる人におすすめ