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No.15
HFPEFに合併した心房細動に対するカテーテルアブレーション治療の有効性

2013/09/05
佐々木真吾=弘前大学大学院医学研究科 不整脈先進治療学講座

 心機能は収縮機能拡張機能に分類される。収縮機能の指標として左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)が臨床で広く利用されているが、近年は拡張機能の重要性が指摘されている。LVEFが保たれた心不全は以前、拡張不全と呼ばれ、心不全患者の約30~50%を占めるとされていた。しかし、収縮不全が同時に拡張機能障害を伴うことや拡張不全がLVEF以外の収縮機能の低下を伴うことから、最近ではLVEFの保たれた心不全(heart failure with preserved ejection fraction:HFPEF)と呼ばれている。

 心房細動(atrial fibrillation:AF)はそれ自体が脳梗塞や心不全の原因となり、適切な治療選択が重要である。AFのリズムコントロールとしての高周波カテーテルアブレーション(catheter ablation:CA)は近年のマッピングシステムの進歩やアブレーション方法の工夫により治療成績がさらに向上している。近年では心不全、主に収縮機能の低下した心不全を合併したAFに対しても積極的にCAが試みられ、CA成功例では心機能の改善が得られている1,2)

【論文】
Efficacy, Safety and Outcomes of Catheter Ablation of Atrial Fibrillation in Patients with Heart Failure with Preserved Ejection Fraction.
J Am Coll Cardiol. 2013 Jul 20. doi:pii: S0735-1097(13)02830-1.10.1016/j.jacc.2013.07.020

【目的】
 HFPEFに合併するAFに対するCA治療の有効性と安全性を検討すること。

【対象】
 対象はLVEFが保たれる(LVEF>50%)にも関わらず心不全症状(肺水腫、下肢浮腫、易疲労感、労作時の呼吸困難)を伴い、欧州心臓病学会(ESC)の提唱するHFPEF診断基準3) を満たす薬物治療抵抗性、有症候性心房細動74例。中等度以上の心弁膜症、心弁膜症術後、呼吸器疾患、腎疾患、活動性の虚血性心疾患例は除外し、少なくとも1回以上の心不全入院の既往を有する例を対象とした。

【方法】
 74例をCA前に電気的除細動によりAFを停止させ洞調律化した42例(SR pre-CA群)とCA施行時までAFが持続した32例(AF pre-CA群)に分類し、CA施行後12カ月間以上に渡り経過観察を実施した。CAはCARTOシステムを用いた両側肺静脈拡大隔離法4,5)で行い、肺静脈隔離後にもAFが持続する場合には付加的アブレーション(左房天蓋部の線状アブレーション、上大静脈隔離、CFAEアブレーション)を追加し、それでもAFが持続する場合には電気的除細動により洞調律化した。

 CA施行後、二群間でCA後のAF再発率、洞調律維持に寄与する因子について比較検討した。AF再発の有無の確認は外来受診時の自覚症状と12誘導心電図(CA後は2~4週間ごと、以後は1~3カ月ごと)、Holter心電図あるいは携帯型心電計(CA施行2週間、1、3、6カ月後)により実施し、AFまたは30秒間以上持続する心房頻拍を再発と定義した。CA施行3カ月以後に再発の確認された例(54例)に対しては、再度CAが施行された。

 複数回のCAを施行後にもAF再発を認めた20例(AF post-CA群)とAF再発を認めず洞調律が維持された54例(SR post-CA群)に分類し、2群間での左室ストレインおよびストレインレートを含むエコー指標の変化を比較した。

【結果】
 観察期間(平均34±16カ月間)中、単回または複数回のCAによる薬物非投与下での洞調律維持率はそれぞれ27% (74例中20例)、45% (33例)であった。複数回のCAと薬物治療の併用下での洞調律維持率は73% (54例)であった。CAおよび観察期間中、重篤な合併症の発現は認められなかった(表1)。多変量解析(Multivariate Cox regression analyses)を用いた検討ではAFのタイプ(ハザード比:1.81、95%信頼区間[CI]:1.03-3.17、P=0.04)と高血圧(ハザード比:0.49、95%CI:0.24-0.96、P=0.04)がAF再発の独立した危険因子であった。

著者プロフィール

●井川修(日本医大多摩永山病院内科・循環器内科臨床教授)●尾野恭一(秋田大生理学教授)●古川哲史(東京医科歯科大難治疾患研究所教授)●村川裕二(帝京大付属溝の口病院第4内科教授)●渡邉英一(藤田保健衛生大内科学講師)[五十音順]

連載の紹介

What’s New in Electrocardiology by JSE
不整脈学や心電図学の主要雑誌の中から、その道の第一人者が「なるほど」とうなった新着論文をピックアップ、新しい知見のポイントを分かりやすく解説します。

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