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No.13
心房細動のエンジンに対するアブレーション治療は有効か?
RotorとFocal Impulseの描出成功が切り開く新たな展開

2013/06/04
山﨑正俊=名古屋大学 環境医学研究所 心・血管分野

 心房細動の発生は高齢者に多く、心機能の悪化による心不全や血栓塞栓症による脳梗塞を引き起こす。空前の高齢化社会を迎えたわが国でも、急速に増加しつつある心房細動患者に対する有効な予防・治療対策の確立が急務である。

 発作性心房細動は、Haïssaguerreらが提唱した肺静脈電気的隔離術(肺静脈から発生する巣状興奮の電気的隔離)の普及に伴って治療成績が大幅に向上し、多くの患者がその恩恵を享受することとなった。持続性・慢性心房細動においても、現在の主流となった拡大肺静脈隔離術に加え、Nademaneeらが提唱している心房内細動基質(CFAE)焼灼法、自律神経節へのアブレーション、心房内各領域への線状焼灼など、様々な治療法を組み合わせて行うことによって、少しずつ治療成績は向上してきている。しかしながら、施設間、さらに術者の技量により成功率のバラツキは大きく、簡便に有効な持続性・慢性心房細動治療が行われるようになるための革新的治療法の開発が待たれている。

 今回、Narayanらのグループは、新しい信号処理技術を用いて、持続性・慢性心房細動維持の機序として重要と考えられているRotor旋回興奮)とFocal impulse巣状興奮)の描出に成功し、同部位に対する高周波通電が持続性・慢性心房細動治療における有効な治療法となり得る可能性を検証した論文を発表した。

【論文】
Narayan SM, Krummen DE, Shivkumar K, Clopton P, Rappel WJ, Miller JM.
Treatment of Atrial Fibrillation by the Ablation of Localized Sources.
-CONFIRM (Conventional Ablation for Atrial Fibrillation With or Without Focal Impulse and Rotor Modulation) Trial-
J Am Coll Cardiol. 2012;60:628-636

目的:Rotor(旋回興奮波)もしくはFocal impulse (巣状興奮波)によって心房細動は維持され、同部位に対する高周波通電によって心房細動は停止するという仮説の検証を行う。

方法:64電極のバスケットカテーテルを左右心房内に挿入し、心房心内膜側の電位から興奮伝播様式の詳細な解析を施行した。RotorとFocal impulseを描出し、同部位に対する高周波通電(FIRM ablation)を施行後に従来から行われている拡大肺静脈隔離術を施行した群(FIRM-guided)と、拡大肺静脈隔離術+線状焼灼群(FIRM-blinded)間において長期成績を比較検討した。

結果:本研究における心房細動107症例中の72%は持続性心房細動患者であり、97%の症例において、局所起源の興奮波(RotorまたはFocal impulse)の描出が可能であった。FIRM-guided群においては、86%の症例で心房細動の停止、もしくは細動周期の延長を認め、さらに単回のアブレーション治療における洞調律維持率は82.4%と有意差をもって、FIRM-blinded群に優っていた。

著者プロフィール

●井川修(日本医大多摩永山病院内科・循環器内科臨床教授)●尾野恭一(秋田大生理学教授)●古川哲史(東京医科歯科大難治疾患研究所教授)●村川裕二(帝京大付属溝の口病院第4内科教授)●渡邉英一(藤田保健衛生大内科学講師)[五十音順]

連載の紹介

What’s New in Electrocardiology by JSE
不整脈学や心電図学の主要雑誌の中から、その道の第一人者が「なるほど」とうなった新着論文をピックアップ、新しい知見のポイントを分かりやすく解説します。

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