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No.12
非侵襲的体表面心電図による心房細動メカニズムの評価は可能か

2013/04/23
中居賢司=岩手医科大学歯学部歯科内科学分野

 1903年、Einthovenが増幅器や電子機器のない時代に現在の心電計の基本となる高感度の弦線検流計を開発したことはブレークスルーであり、1924年にノーベル生理学・医学賞を受賞したことは特記すべきことである。心電現象は、本来、心臓内の刺激伝導系の興奮伝搬過程と心筋組織性状(虚血や繊維化など)の三次元情報を有する。Einthovenの双極誘導に加えて、Wilsonの中心電極の考案より成り立つ標準12誘導心電図の原型は、約100年も続く医療技術である。理論と経験を積んだ循環器医師のいわゆる“逆問題展開”により、それぞれの病態がイメージされていることは、職人的な技である。しかし、体表面心電図法は、近年のカテーテルを用いたElectro-anatomical mapping(CARTO system)などの心内心電現象の三次元表示やmulti-slice CTやMRを用いた精緻な立体構造描出には及ばない。

 Haïssaguerreは、肺静脈由来の心房性期外収縮が心房細動の引き金になることをカテーテルによる心房性期外収縮の焼灼で証明して、肺静脈隔離術の先鞭となったことはあまりにも有名である(Haïssaguerre M, et al: Spontaneous Initiation of Atrial Fibrillation by Ectopic Beats Originating in the Pulmonary Veins.N Engl J Med 1998; 339:659-666.)。今やカテーテルを用いたElectro-anatomical mappingによる心内心電現象の三次元表示はカテーテル治療(焼灼法など)には必須の羅針盤である。

 今回、Haïssaguerreらは、新しい信号処理技術を用いた体表面パノラミックmappingにより心房細動でのマクロリエントリー回路の局在などの評価を行い、心房細動の肺静脈隔離術のための非侵襲的ガイドとしての可能性を検証した論文を発表した。

【論文】非侵襲的パノラミック体表面マッピングによる心房細動メカニズム
1. Haïssaguerre M, et al. Noninvasive Panoramic Mapping of Human Atrial Fibrillation Mechanisms: A Feasibility Report. J Cardiovasc Electrophysiol 2012; 12:1-7.

目的:新しい信号処理技術を用いた体表面パノラミックmappingにより心房細動でのマクロリエントリー回路の局在などの評価を行い、心房細動の肺静脈隔離術のための非侵襲的ガイドとしての可能性を検証する。

方法:252電極ベストを装着して心房細動患者の胸部単極体表面心電図を記録し、引き続き胸部CTを撮像して両者の再構築を行った。QRSTの減算を行い、心房細動波の位相mappingおよびdominant frequency & cycle length の機能図を作成した。

結果:252チャネル体表面心電図を用いた非侵襲的パノラミック機能図は、心房細動波のマクロリエントリー・ローターの局在の評価が可能であり、肺静脈隔離術スクリーニングへの応用が期待される。

著者プロフィール

●井川修(日本医大多摩永山病院内科・循環器内科臨床教授)●尾野恭一(秋田大生理学教授)●古川哲史(東京医科歯科大難治疾患研究所教授)●村川裕二(帝京大付属溝の口病院第4内科教授)●渡邉英一(藤田保健衛生大内科学講師)[五十音順]

連載の紹介

What’s New in Electrocardiology by JSE
不整脈学や心電図学の主要雑誌の中から、その道の第一人者が「なるほど」とうなった新着論文をピックアップ、新しい知見のポイントを分かりやすく解説します。

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