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No.11
心室頻拍/上室性頻拍の鑑別手法、‘head to head’の比較で明らかになったこと

2012/09/10
吉岡公一郎=東海大学医学部循環器内科

 QRS幅の広い頻拍は日常臨床でしばしば遭遇するが、早急に治療方針を決定する必要に迫られる頻拍性不整脈である。その診断はバイタルサインの安定度や過去の頻拍歴などを参考に経験則に沿って行われることも多く、診断に苦慮するケースも少なくない。今回ご紹介する論文は過去に発表されている心室頻拍/上室性頻拍VT/SVT) の鑑別に有用とされる鑑別手法をhead to headで比較することから、その特徴と問題点について報告している。

【論文】
Jastrzebski M, Kukla P, Czarnecka D, Kawecka-Jaszcz K. Comparison of five electrocardiographic methods for differentiation of wide QRS-complex tachycardias. Europace 2012.14(8):1165-1171.

【背景と目的】
 QRS幅の広い頻拍には、心室頻拍、心室内伝導障害を伴う上室性頻拍、WPW症候群に代表される早期興奮を伴う上室頻拍がある。鑑別方法として過去に多くの診断基準やアルゴリズムが報告されているが、オリジナル論文で提唱された評価方法を用いて追試を行うと、報告された値よりも感度、特異度、診断精度ともに低くなることが多い。いままでに複数の診断アルゴリズムを同時に比較検討した報告は少ない。

 本論文では、心室頻拍を診断するための5つの評価方法(下記)を同時比較し、感度、特異度、診断精度について検討する。

 1) 12誘導心電図のII誘導におけるQ波からR波ピークまでの到達時間計測クライテリア (Lead II RWPT)
 2) 12誘導心電図のaVR誘導を用いたアルゴリズム (Lead aVR)
 3) Bayesianアルゴリズム
 4) Griffithの提唱するアルゴリズム
 5) Brugadaの提唱するアルゴリズム

【方法】
 対象は204人におけるQRS幅の広い頻拍連続260件とした。手法は後ろ向き解析である。対象となる頻拍はQRS幅120ms以上、かつ心拍数100~250bpmとした。心房に器質的疾患を有する症例は本検討から除外した。解析は循環器専門医と不整脈専門医の2名で行われ、最終診断は電気生理学的検査を施行し、VT/SVTを鑑別した。

【結果】
 患者背景を表1に示す。SVT群101例、VT群159例であった。SVT群では年齢が若く、女性の割合が46%を占めた。左室駆出率は平均52%とVT群の34%よりも高く、抗不整脈薬の使用率は低値であった。基礎疾患に冠動脈疾患を有する割合が低く、器質的心疾患を有さない割合がVT群に比し有意に高かった。

著者プロフィール

●井川修(日本医大多摩永山病院内科・循環器内科臨床教授)●尾野恭一(秋田大生理学教授)●古川哲史(東京医科歯科大難治疾患研究所教授)●村川裕二(帝京大付属溝の口病院第4内科教授)●渡邉英一(藤田保健衛生大内科学講師)[五十音順]

連載の紹介

What’s New in Electrocardiology by JSE
不整脈学や心電図学の主要雑誌の中から、その道の第一人者が「なるほど」とうなった新着論文をピックアップ、新しい知見のポイントを分かりやすく解説します。

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