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No.9
心房細動に対する「Up-stream」治療への再考

2012/07/09
野呂眞人=東邦大学医療センター大橋病院循環器内科

 心房細動に対するARB、ACE投与が「Up-stream」治療と称され、心房細動への確定されるべき治療法として、多くの研究結果が報告され、その結果も「Up-stream」治療を推奨するものであった。しかし、2009年にGISSI-AFで、「ARBの投与は心房細動再発率に影響しない」、さらに2011年にはACTIVE-Iで「ARB投与は心房細動症例の血管性イベントを抑制しない」と報告され、以後、極端なまでに、「Up-stream」治療は崩壊したかに受け止められている。今回、取り上げた論文は、ほぼ正常心機能の発作性心房細動に対する、ARBの発作再発抑制効果を検討している。
                      
【論文】
Angiotensin II-Antagonist in Paroxysmal Atrial Fibrillation (ANTIPAF) Trial
Circ Arrhythmia Electrophysiol.2012;5:43-51

【目的】
 ARBは発作性心房細動の再発を25%以上低下させるとの仮説の検討

【対象】
 器質的心疾患、低心機能、低腎機能、抗不整脈薬投与症例を除外した、正常心機能の43施設425例

【方法】
 前向きな無作為化プラセボ対照比較二重盲検試験
 Olmesartan群(40mg/day):214例、 プラセボ群:211例
 電話伝送心電図(tele-ECGs)で1日1回以上、1分間の記録を電話で送信
 主要評価項目は12カ月間で、発生頻度として、ECGデータを取得できた全日数に対するPAF発現日数の割合
 副次的転帰パラメーターは心房細動が最初に確認された日数、QOL、持続性心房細動までの日数、不整脈薬投与までの日数、90日間治療後の心房細動発生頻度、心血管性イベント

【結果】
 主要評価項目:Olmesartan群15.1%(95%信頼区間:0.114-0.188)、 プラセボ群14.7(同:0.109-0.184);群間差0.004(-0.046-0.055)、P=0.770で有意差なし。
 心房細動再発率は両群間で類似の分布を示し、10%以下が最も多く90%以上にも小さな峰が認められた。
 副次的転帰パラメーター:QOL、初回の心房細動再発までの時間、持続性心房細動進展までの時間、入院数などにも両群間差はなし。Olmesartan群の方がAmiodarone投与までの時間が長かった(P=0.04)。

著者プロフィール

●井川修(日本医大多摩永山病院内科・循環器内科臨床教授)●尾野恭一(秋田大生理学教授)●古川哲史(東京医科歯科大難治疾患研究所教授)●村川裕二(帝京大付属溝の口病院第4内科教授)●渡邉英一(藤田保健衛生大内科学講師)[五十音順]

連載の紹介

What’s New in Electrocardiology by JSE
不整脈学や心電図学の主要雑誌の中から、その道の第一人者が「なるほど」とうなった新着論文をピックアップ、新しい知見のポイントを分かりやすく解説します。

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